artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
ロトチェンコ「彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児」
会期:2012/03/02~2012/03/27
ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]
革命前後のロシア/ソ連を代表するアーティスト、ロトチェンコによるポスター、コラージュ、写真、ドローイングなどの展示。やはり赤が主体で、ロシア語と図像の組み合わせがいま見ても斬新だ。壁にも赤や黒でロシア語や矢印などの記号が大きく書かれ、展示内容を強調しているが、ちょっとやりすぎの感がしないでもない。監修に奇才・矢萩喜從郎が加わっている。
2012/03/12(月)(村田真)
平良美樹 個展「イキモノ譚(ばなし)」
会期:2012/03/03~2012/04/01
東京画廊[東京都]
これは一風変わった作品。熊の毛皮が人の姿のようにいくつか立っていて、その足下には漢字の書かれた古い紙がたくさん積まれている。なにかよくわからないけどフォークロアの匂いがする。奥のコーナーでは、トカゲとヒョウタンを足して2で割ったようなかたちの人形の表面にも漢字が書かれ、花咲か爺さんや鶴の恩返しのような昔話が壁に貼られている。この昔話が荒唐無稽でつい読みふけってしまう。かつて人と自然が不可分だった時代、いとも簡単に人間は動物に、動物は人間に変身していた。そんなプリミティブな世界観のもとに日本各地に伝わる口承文芸を集め、それを文字化、立体化しているらしい。美術作品として見ると「つたないインスタレーション」かもしれないが、そこに漂う気配は久しく現代美術に欠けていたなにかを感じさせる。作者はまだ20代の書家で、GEISAIで銀賞などを受賞しているという。
2012/03/12(月)(村田真)
鈴木紗也香 展
会期:2012/03/05~2012/03/17
ギャラリーQ[東京都]
パステルカラー主体の明るい色彩で身近なものや空間を描いている。直線で仕切られたフラットな部分とフリーハンドによる筆触を強調した薄塗りの部分があり、両者の異質な要素の組み合わがじつにうまい。ただこのテの絵は最近とても多いので、いかに差異化を図るかが今後の課題だ。
2012/03/12(月)(村田真)
平子雄一──庭先目もリーズ 見えない森
会期:2012/03/01~2012/03/29
LIXILギャラリー[東京都]
黒地に鬱蒼とした森の風景を描いている。どの絵にも人物が出てくるが、どれも頭部が樹木になった植物人間だ。幻想的で物語性たっぷりだが、なにより美しい配色や、細かいながらもためらいのないタッチが快い。実際の木の切り株に土でできた植物人間をへばりつけた立体作品も展示。
2012/03/12(月)(村田真)
鉄川与助の教会建築──五島列島を訪ねて
会期:2012/03/08~2012/05/26
LIXILギャラリー[東京都]
長崎県には130ものキリスト教会があり、全国の1割以上を占めるという。うち五島列島を中心に20棟以上(県外を含めれば30棟を超す)の教会を建てたのが鉄川与助(1879-1976)だ。28歳で棟梁建築家として初めて教会を設計・施工したのを皮切りに、木造、レンガづくり、鉄筋コンクリートなど、さまざまなスタイルで増殖させていった。写真を見ると、なんでこんな場所に教会がとあきれるくらい田舎が多く、一軒家程度の小さなものが少なくないが、それだけに創意工夫を重ねて風土になじんだ教会を追求していったようだ。現存する教会は半数以下に減ったが、4棟が国の重要文化財に指定されている。これは知らなかった。ちょっと見てみたいけど、五島列島なんて行く機会ないだろうなあ。ちなみに本人は敬虔な仏教徒だったという。
2012/03/12(月)(村田真)