artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

南川史門「鏡、音楽、マルチメディア」とコーヒーパーティー

会期:2012/02/17~2012/04/01

ナディッフギャラリー[東京都]

ギャラリーには椅子、テーブル、自転車などが置かれ、壁には本人の絵やポスターや鏡などが掛かっている。なぜかデュシャンのレディ・メイドで知られる瓶乾燥器もある。一見雑然としているが、じつはよく考えて配置されてるようで、しばらくいたけど居心地がよかった。絵もさらっとしていて悪くない。こういうセンス、うらやましい。

2012/02/24(金)(村田真)

フェルメールからのラブレター展

会期:2011/12/23~2012/03/14

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

2度目のフェルちゃん、今回はニコンの単眼鏡(7倍)を携えての訪問。単眼鏡は画面を拡大して細部まで観察するために買ったのだが、拡大するだけでなく、画面を枠どり(丸いが)その部分に神経を集中させるという予想外の効果ももたらしてくれた。これによって判明したことその1、《手紙を読む青衣の女》はピントを合わそうにもボカシが絶妙なため合わせにくいこと。これは輪郭がはっきりした《手紙を書く女と召使い》と対照的で、もちろんほかの画家にも見られない特徴だ。このピンボケ感をフェルメールの独自性と考えると《手紙を読む青衣の女》はまさに画家の代表作といえるだろう。その2、手の描き方がヘンなこと。これは前々から疑問に感じていたことだが、たとえば《絵画芸術の寓意》の画家の右手が妙にぽってりしていたり、《ワイングラスを持つ女》《ヴァージナルの前に座る女》の左手が豚足みたいに不格好なのだ。今回の《手紙を書く女》も《手紙を書く女と召使い》も、テーブルの上に置いた左手がどうもおかしい。こんなふうに見えるか? ここになにかフェルメールの秘密が隠されているのではないかと勝手に思っている。

2012/02/22(水)(村田真)

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ワンダーシード2012

会期:2012/02/04~2012/02/26

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

若手アーティストによる10号以下の小品の展示即売会。4~5年前のプチバブルのころはオープン後まもなく完売していたもんだが、今年は会期終盤なのに半分程度しか売れてない。でも最初のころはもっと売れてなかった気がする。たかだか10年なのに盛衰が激しくね? ちょっとよさげなアーティストをピックアップしてみると、熊野海、木下令子、椿崎千里、鈴木寛人、松本奈央子、原田悠子あたり。ほとんど女性だ。名前だけじゃわからないだろうけど、これらの作品に共通するのは「ペインティング」だということ。てか、それ以外の大半の作品はマンガかイラストで、絵画にすらなってない。

2012/02/22(水)(村田真)

RYUGU IS OVER!!──竜宮美術旅館は終わります

会期:2012/02/17~2012/03/18

竜宮美術旅館[神奈川県]

ラブホ、というより連れ込み旅館というにふさわしい昔ながらのたたずまいを誇る竜宮美術旅館。この3月、日ノ出町駅前再開発のため取り壊されるこの珍妙な建築全館を使って、10人以上の若手アーティストがインスタレーションを繰り広げた。キュレーターはサラリーマンコレクターとして知られる宮津大輔氏。取り壊しを待つ建物での展覧会というのは、たいてい現状復帰しないでもいいことが多いためやり放題できて楽しいものだ。ゴードン・マッタ・クラークやPHスタジオは解体前の家を真っ二つにしたし、遠藤利克は同潤会アパートで水道を出しっぱなしにして部屋を水浸しにしたものだ。最近の若いアーティストはそこまではしない。お行儀がいいというか、ハデなインスタレーションを避けたがるというか。絵や彫刻みたいなブツとしての作品にこだわる面もあるんだろう。例外は丹羽良徳と狩野哲郎だ。丹羽はこれまで物置として使われていた開かずの間にビデオを展示。Mくんの部屋みたいに雑然とした薄暗い空間に、3台のモニターが妖しい光を放つ。そのビデオも、キオスクで買った雑誌を本屋に持ち込んでもういちど購入するという挑発的なもの。内容も場所も自閉的・変態的でとてもいい。狩野は部屋の窓を開け放ち、畳を一部はがして植物やロープやホースなどを張り巡らしている。寒風の吹き込む部屋は内とも外ともつかぬ開放空間になっていた。あとは、いつもコーヒーの香り漂うキッチンの壁にコーヒー液で描いた浅井裕介のドローイング、色鉛筆を固めて削った彫刻を玄関の把手にすり替えた八木貴史のインスタレーション、その上のガラス窓に真っ赤な金魚を泳がせた志村信裕の映像などがすんばらしい。それにしても取り壊されるのは惜しい建物だ。

2012/02/20(月)(村田真)

ザ・タワー──都市と塔のものがたり

会期:2012/02/21~2012/05/06

江戸東京博物館[東京都]

高所恐怖症にもかかわらず高いところに上ったり見下ろしたりするのが大好き、という心理は自分でもよく理解できないが、とりあえず新しい街を訪れたらいちばん高いところに上ってあたりを睥睨することにしている私にとって、この展覧会はとても興味深いものだった。まず、アタナシウス・キルヒャーによる「バベルの塔」の図から展示が始まっていて、趣味のよさを感じさせる。が、あとはエッフェル塔、浅草凌雲閣(十二階)、通天閣、東京タワーの4つを中心とした展示で、なにかものたりない。なにがものたりないんだと思ったら、いまはなきWTCも最新のブルジュ・ハリファも出てないからだ。もちろんこのふたつは超高層ビルであってタワーではないのだから、出てなくても不思議はないのだが、でも砂漠に屹立するブルジュ・ハリファの姿はバベルの塔そのものだろ(ドバイのバブルの塔でもあった)。話が飛んだ。元に戻すと、物件としてはものたりなさを感じるけど、内容的には十分満足のいくものだった。とくにエッフェル塔のあの形態がどのように発想されたかを伝える初期のドローイングや、次の万博(1900)のために考えられたエッフェル塔改造計画、描く人によって微妙に異なる凌雲閣の先細り度、東京タワー建設中の写真や完成まもないころの展望台から眺めた風景写真など、興味深い展示が多い。で、最後はもちろんこの5月に開業する東京スカイツリーの紹介。

2012/02/20(月)(村田真)

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