artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
「東京国立博物館140周年記念グッズ」報道発表会
会期:2012/03/12
東京国立博物館[東京都]
東博が創立140年を記念してなにをやるかと思ったら、海洋堂と組んでフィギュア製作だと。フィギュアってひとことでいえばニセモノ。東博たるもの、なにが悲しうてニセモノづくりにはげむのか、なんてことはいわない。ぼくもフィギュア好きだもん。今回フィギュア化されるのは遮光器土偶、埴輪、銅鐸など6種の考古遺物。3月20日から館内に設置したカプセルマシンで1回400円で買える。記者会見では、東博の担当者が細かい点まで再現してもらうためしつこく注文をつけたというが、海洋堂にしてみればイヤなクライアントだったに違いない。これが「第1集」なので2集、3集と続いていくらしい。ぼくとしてはぜひ「踏絵」をフィギュア化してもらいたい。携帯踏絵、かわいくね? あ、プレスリリースを見たらフィギュアだけじゃなく、凸版印刷とコラボした「洛中洛外図屏風(舟木本)」の高品位複製(なんと300万円! ただし来年3月までは特別定価250万円、ってだれが買う!?)や、資生堂パーラーと製作した「見返り美人のチーズケーキ」も館内で発売するという。昔の東博だったら考えられないことだが、おそらく独立行政法人化以降のことだろう、いまや白昼堂々と民間企業と手を組むようになった。老いてますます盛ん、東博もさらに「でんぢゃらすじーさん」を目指してほしい。
URL=http://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=5850#goods
2012/03/12(月)(村田真)
MAMプロジェクト 016:ホー・ツーニェン
会期:2012/02/04~2012/05/27
森美術館ギャラリー[東京都]
植木の手入れをする老婆、ベッドに横になるデブチン、古道具屋の薄汚いおやじ……悪い夢みたいな映像。途中で出た。
2012/03/06(火)(村田真)
イ・ブル「私からあなたへ、私たちだけに」
会期:2012/02/04~2012/05/27
森美術館[東京都]
なにか既視感があるなあ。以前、国際交流基金フォーラムで主要作品を見たせいもあるが(そのときのほうがインパクトが大きかった)、それだけではない。まず思い出したのは、2年前に同じ森美術館でやった小谷元彦の個展。作品だけでなく展示構成や照明も似たような印象を受ける。そこからの連想ゲームで松井冬子、椿昇、草間彌生、ルイーズ・ブルジョワまで芋づる式に浮上してきた。芋づるといえば束芋も入れとこう。さてこれらに共通するものはなんだろう? たぶんそれは、ある種の内臓思考であり、甲殻嗜好であり、増殖志向だ。と思いつくことをテキトーに書いてみて、自分でなるほどと思った。これらはアートだけでなく近年のサブカルチャーの傾向でもあるのだ。彼女はしばしば韓国の政治・社会的問題と結びつけて語られがちだが、それよりむしろ同時代のサブカルチャーとのつながりを見たほうが理解しやすいかもしれない。
2012/03/06(火)(村田真)
梅田哲也「待合室」
会期:2012/02/07~2012/03/15
オオタファインアーツ[東京都]
ギャラリーの前まで行くと内部が暗く、天井からなにかぶら下がっているのが見えたので、こりゃ工事中かと思ったら、「作品の一部は熱を帯びておりますのでご注意ください」みたいな注意書きが目に入る。つまり「そういう作品」なのだ。ギャラリー内では天井板がはがされ(元からあったっけ)、配管や空調機がむき出しになっている。一部の配管は垂れ下がり、先っぽから水が滴り落ちて床に置かれたタライにポタポタと。火の灯ったアルコールランプや袋入りの水苔など、とにかく意味ありげなものがいろいろとインスタレーションされている。貸し画廊じゃあるまいし、これでいったいなにを売ろうというのだろう。そのことも含めて、これはギャラリー空間をひと皮むくインスタレーションではないかと。
2012/03/06(火)(村田真)
生誕100年 ジャクソン・ポロック展
会期:2012/02/10~2012/05/06
東京国立近代美術館[東京都]
日本では初の本格的なポロックの回顧展。20歳前後の表現主義的な人物像から次第に形態が崩れ、色彩と線による抽象を経て、いわゆるポロックらしいポーリング(絵具を注ぎ込む技法)を含む「アクション・ペインティング」にいたるまで、相当数の作品が展示されている。なぜ、いかにしてこのような作品にいたったかがよくわかる構成だ。これは期待以上にいい展覧会だ……と思ったとたん、肩すかしを食う。最盛期の視界を覆うようなポーリングの大作がわずかしか来ておらず、すぐに具象的形態が復活し、叙情的ともいえる晩年のスタイルに移行していくからだ。あれれ? って感じ。やはりポロックといえば、MoMAにあるような幅5メートルを超す大作を1点でもいいから見たかったなあ。しかも今回唯一の大作と呼べる《インディアンレッドの地の壁画》はなんと、アメリカの天敵イランのテヘラン現代美術館からの出品だという。同展の「評価額200億円!! 門外不出、伝説の大作」の惹句はこの作品を指す(たしかにすばらしい作品だと思うが、イラン人はこの“アメリカの英雄”の絵をどう評価しているのだろう? もういらんとか)。ともあれポロックの作品は評価額が高騰しすぎたため、もはや大作は借りられなくなってしまったということだ。今回はそんな困難な状況のなかでよく健闘したほうだと思うが。展示の最後に、これは最近の流行なんだろう、イーストハンプトンの納屋を改造したポロックのアトリエが再現されていた。足下には絵具だらけの床の写真が敷いてあってなかなかリアルだ。ところで、同展では「アクション・ペインティング」という用語は使われていない。誤解を招きやすいからだろうけど、もはや死語? そのかわり多用されているのが「ポード絵画」。
2012/03/02(金)(村田真)