artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

杉本博司「ハダカから被服へ」

会期:2012/03/31~2012/07/01

原美術館[東京都]

最近ものすごいペースで飛ばしてる(でも本人は涼しい顔の)杉本博司だが、今回選んだテーマは「ハダカから被服へ」、つまり衣服。これはシャネル、サンローラン、川久保玲などのファッションを撮りためた「スタイアライズド・スカルプチャー」シリーズを中心とする展示だが、もちろんそれだけでは済まないのが杉本だ。衣服をテーマにするとは、いってみれば人類の歴史を振り返ること。そこまで大風呂敷を広げ、「ジオラマ」シリーズから「猿人」や「ネアンデルタール」、「肖像写真」シリーズから「マリー・アントワネット」や「ヘンリー8世」なども出る。いや写真ばかりではない。「杉本文楽曾根崎心中」のための人形と衣装や雷紋の能衣装といった自作の舞台装束、18世紀の女性の解剖図や戦前の「千人針」を描いた日本画など、彼自身の美術コレクションも出品される。その活動の多彩さと悪趣味スレスレの趣味のよさ(?)には舌を巻くが、それを「衣服」という1点に集約し並べ替えてしまう応用力(鷹揚力でもあるだろう)には驚かされる。でも杉本氏によれば、今回いちばん力を入れたのは庭の垣根だそうだ。なんだか粋な職人化しつつあるなあ。

2012/03/30(金)(村田真)

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レオナルド・ダ・ヴィンチ「美の理想」

会期:2012/03/31~2012/06/10

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

日本で「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」を成り立たせるには作品が1点あれば十分で、あとは周辺画家の作品や関連資料を集めてお茶を濁すのがフツーだが、今回はなんと3点も来ている。ただし3点とも習作みたいなモノクロームの小品だ。というといかにもショボく聞こえるかもしれないが、じつのところほかの画家の手が入ってるかもしれない大作より、こちらのほうがレオナルドの息づかいや手の痕跡が認められ、むしろありがたみが感じられるというものだ(そもそもレオナルドは《モナ・リザ》に代表されるように、描くことの痕跡を極力消そうとした画家だ)。とくに今回は目玉の《ほつれ髪の女》より、2点の《衣紋の習作》に惹かれるなあ。ほかにレオナルドの筆が入っている可能性が高い《岩窟の聖母》、弟子サライが師匠の絵を参考にして描いたとされる《聖母子と聖アンナ》、そして彫刻版やヌード版を含め20点にもおよぶ《モナ・リザ》のヴァリエーションなど、ミステリーじみた来歴もあってなかなか楽しめる。

2012/03/30(金)(村田真)

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東京都美術館の記者発表会およびプレス内覧ツアー

会期:2012/03/29

東京都美術館[東京都]

改修工事がほぼ終わった都美術館で内覧ツアーが行なわれた。公募棟は内部の改装くらいだったが、企画棟のほうはほぼ全面建て替えとなり、1フロアが広くなった。天井高も3.2メートルから4.5メートルにかさ上げされ、エスカレータで上下移動できることに。つまり団体展は現状維持、企画展はますます発展、ということかな。あとはどこの美術館でもやってることだが、レストランやカフェやミュージアムショップの増床と中身の充実だ。

2012/03/29(木)(村田真)

日常の変容──多摩美術大学大学院油画修了生有志学外展

会期:2012/03/26~2012/03/31

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

BankARTでは1月からずっと美大の卒展をやっているが、そのなかではこれがもっともレベルが高かったと思う。まあ大学院だから平均点が高いのは当然だけど、でも残念なのはある程度パターン化しているようで、よくも悪くも飛び抜けて注目に値するもの、つまりベラボーな作品がなかったこと。そのなかでも好感がもてたのは、余白を大きく残しながら植物の実のようなものを描く姜善英、延々と自画像(ナルシスティックでないのが幸いだ)を描き続ける河本咲子、しわの寄った毛布にこだわる渡邊聡志、妖怪女を描いた襖を組み立てて小屋にした田川春菜あたり。

2012/03/27(火)(村田真)

北川純 展覧会

会期:2012/03/17~2012/04/01

ギャラリー*ショップちりめんや[神奈川県]

元呉服店だったアートショップちりめんやのショーウィンドーで小展覧会。4本の造花のバラの花芯部が縦長の楕円形になっていて、その上端にダイヤのように輝く粒がポツンと。いわゆるクリちゃんですね。いやもちろんクリスタルのことで。

2012/03/26(月)(村田真)