artscapeレビュー

生誕100年 ジャクソン・ポロック展

2012年04月15日号

会期:2012/02/10~2012/05/06

東京国立近代美術館[東京都]

日本では初の本格的なポロックの回顧展。20歳前後の表現主義的な人物像から次第に形態が崩れ、色彩と線による抽象を経て、いわゆるポロックらしいポーリング(絵具を注ぎ込む技法)を含む「アクション・ペインティング」にいたるまで、相当数の作品が展示されている。なぜ、いかにしてこのような作品にいたったかがよくわかる構成だ。これは期待以上にいい展覧会だ……と思ったとたん、肩すかしを食う。最盛期の視界を覆うようなポーリングの大作がわずかしか来ておらず、すぐに具象的形態が復活し、叙情的ともいえる晩年のスタイルに移行していくからだ。あれれ? って感じ。やはりポロックといえば、MoMAにあるような幅5メートルを超す大作を1点でもいいから見たかったなあ。しかも今回唯一の大作と呼べる《インディアンレッドの地の壁画》はなんと、アメリカの天敵イランのテヘラン現代美術館からの出品だという。同展の「評価額200億円!! 門外不出、伝説の大作」の惹句はこの作品を指す(たしかにすばらしい作品だと思うが、イラン人はこの“アメリカの英雄”の絵をどう評価しているのだろう? もういらんとか)。ともあれポロックの作品は評価額が高騰しすぎたため、もはや大作は借りられなくなってしまったということだ。今回はそんな困難な状況のなかでよく健闘したほうだと思うが。展示の最後に、これは最近の流行なんだろう、イーストハンプトンの納屋を改造したポロックのアトリエが再現されていた。足下には絵具だらけの床の写真が敷いてあってなかなかリアルだ。ところで、同展では「アクション・ペインティング」という用語は使われていない。誤解を招きやすいからだろうけど、もはや死語? そのかわり多用されているのが「ポード絵画」。

2012/03/02(金)(村田真)

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