artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
大西康明「体積の裏側」
会期:2011/02/15~2011/04/17
愛知県美術館[愛知県]
なんていうのか知らないけれど、スーパーで生鮮食品などを入れる袋に使われる吹けば飛ぶような薄い半透明の幕を、天井から黒い糸で吊るして山の表面のように凹凸をつくっている。その下に入ると幕がふわりと動き、下から見上げると山の内部から空を見たような妙な気分になる。大西は2007年の「アーツチャレンジ」(当時は「新進アーティスト発見inあいち」というアカ抜けないタイトルだった)の入選作家。しかし「アーツチャレンジ」の入選作家が数年後に愛知県美術館に取り上げられると、このコンペは美術館への登竜門という誤ったヒエラルキーを生みかねない。「アーツチャレンジ」で発掘される才能は必ずしも「美術館美術」になじむとは限らないからだ。
2011/02/20(日)(村田真)
アーツチャレンジ2011
会期:2011/02/15~2011/02/27
愛知芸術文化センター[愛知県]
ぼくも審査に加わったコンペの入選作品展。といっても、ただ作品だけ見て優劣を競うのではなく、愛知芸術文化センターのどの場所で、どんな作品を見せるかというプランを出してもらい、それで判断するコンペなのだ。しかも美術館やホール以外のフォーラムとか階段踊場とか余った場所が候補地なので、すきま風にも冷たい視線にも耐えられるタフな作品が求められるのだが、期待に反して応募の大半は場所を選ばない従来どおりの絵画か彫刻だった。もっと場所から発想し、その場所でしか見られない作品を考えてほしかったなう。そんななかで私のイチ押しだったのが、11階の展望回廊のガラス窓に人から借りてきたカーテンを吊るそうという金沢寿美のプラン。これはこの場所から発想されたこの場所ならではのオリジナルであると同時に、他人からカーテンを借りることで外の世界ともつながり、また作品そのものも「見る」ことと「隠す」ことについての考察をうながしてもいる。じつに多角的に深読みのできる作品なのだ。勝手に村田真賞。
2011/02/20(日)(村田真)
クワイエット・アテンションズ──彼女からの出発
会期:2011/02/12~2011/05/08
水戸芸術館現代美術ギャラリー[茨城県]
水戸で女性だけの展覧会が開かれてるというので、BankARTスクールの受講生だったステキなおねえさま方と水戸芸へ。しかし水戸芸で女性展といえばチャラチャラした少女系の展覧会と思い込んでいたが、まるで勘違いだった。ちゃんとタイトルと出品作家を吟味すれば、明らかに少女系でなくもう少し大人びた展示であることは予想できたのに。ちなみに出品作家は三田村美土里、土屋信子、ツェ・スーメイら12組で、どっちかといえば沈思黙考型だ。その後、近くの料理屋でアンコウ鍋を囲む。じつはこちらが本日のメインだったかも。はふはふ。
2011/02/19(土)(村田真)
TOKYO FRONTLINE
会期:2011/02/17~2011/02/20
3331アーツ千代田[東京都]
ゼロ年代の世界的なアートバブルの波に乗って急増したアートフェアだが、リーマンショック後も勢いはまだ続いてるのか。ってさっき書いたばかりだ。つーか、1日に2本もアートフェアを見るなよ。つーかやるなよ。でも見てしまった。こちらはギャラリーよりアーティストを前面に出したり、アート以外の団体にも出展してもらったり新機軸を打ち出している。やっぱり飽和状態のアートフェア業界で勝ち抜いていくには、いろいろと試行錯誤していかなければならないようだ。
2011/02/18(金)(村田真)
コレド・ウィメンズアートスタイル
会期:2011/02/15~2011/03/14
コレド日本橋をメイン会場にした女性だけの展覧会も今年で3回目。まいど感じるのは、こういう場所に作品を置くのは難しいということ。カゲキなものをやろうとすれば止められるし、場所に合わせようとすれば目立たなくなる。そのため、どっちつかずの中途半端な作品が多くなりがちだ。鈴木紗也香の絵やフジモトアヤのファブリックは、作品そのものは美しいし、場所にも合っているが、それだけに商品広告と見間違えかねない。その点、遠目には人が並んでるように見えながら、近寄ってみたら表面に新聞や雑誌の広告ページを貼りつけたハリボテだったという富田菜摘の人体像は、一見ユーモラスな表情の下に不気味なグロテスクさとシニカルな批評精神が感じられ、秀逸であった。この作品はほかのと違って、ギャラリーよりこういう人のいる場所に唐突に置いたほうが効果的だと思う。
2011/02/18(金)(村田真)