artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

吉岡雅哉「庭いじり」

会期:2011/02/04~2011/03/12

ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート[東京都]

この人の作品は以前「トーキョーワンダーウォール公募展」で見て強烈な印象があった。コンビニの前で性交する男女を、妙にクセのあるタッチで描いていたのだ。こんな不穏な絵が青少年の健全な育成をめざす東京都生活文化局文化振興部が推進する公募展で入選するなんて、東京都も意外と健全なんだなと見直したものだ。今回はコンビニだけでなく、和風のお屋敷の内外で■■たり●●●したりする風景が波打つような筆づかいで描かれ、まるでムンクみたい。案内状によれば、5~6歳のころから春画を模写していたという吉岡は、いまでも「初期衝動のまま描き続けている」という。その特異なモチーフをさらに際立たせているのが、一見フォーヴィズム風の野蛮な(でもじつは達筆な)ウネウネした描線だ。この先どうなるのか見てみたい絵描きである。

2011/02/18(金)(村田真)

ながさわたかひろ展「告白/ヤクルト愛」

会期:2011/02/14~2011/02/19

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

これはすばらしい。野球選手を描いた小型の銅版画なのだが、よく見るとヤクルトスワローズの選手ばかり。2010年に毎試合1枚ずつその試合のハイライトシーンを描き、そのつど球団へ手渡していたという。毎日嬉々として版画を彫る姿が想像され、プロ野球には興味のないぼくにも作者のウキウキした気分が伝わってくる。愛と情熱が感じられる作品だ。ただしヤクルトへの愛と情熱だが。

2011/02/18(金)(村田真)

菅野由美子 展

会期:2011/02/07~2011/02/26

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

身近にある壷や皿などの器をていねいに描いた絵画の発表も3回目。パンフレットに載っている作者のコメントをぼくなりに意訳すると、器は本来そこになにかを盛るべき道具だが、器自身が自己の存在を主張するためには空っぽでなければならない。つまり空っぽこそが器というものの特質であり、だから器を描くということは空洞を描くことにほかならない……。なにか作者の心も埋めがたい空洞を抱えているのだろうか、とよけいな心配。

2011/02/18(金)(村田真)

ニューアドレス、ニューワークス
"New Space, New Works"
荒木経惟「愛の劇場」
「CHINA FOTO」展

オオタファインアーツ/ワコウ・ワークス・オブ・アート/タカイシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム/Zen Foto Gallery[東京都]

六本木の複合商業ビル、ピラミデの2-3階に4軒のギャラリーが一挙オープンした。これはひょっとして数年前、六本木の古いビルにギャラリー数軒を集めた「アート・コンプレックス」と同様、森ビルが再開発を前に仕掛けた文化戦略ではないかと勘ぐったら、はたしてそうでした。森ビルからのプレスリリースによると「森ビル株式会社は、六本木ヒルズ及びピラミデビルに、現代美術を展示・販売するギャラリー5店舗をオープンします」とある。オープンする主語は各ギャラリーではなく、森ビル株式会社なのだ。まあギャラリーとしては、家賃を安くしてもらって(たぶん)美術館やギャラリーの集まる一等地に店を開けるんだから悪い話ではないだろう。ちなみに5店舗というのは、ヒルズ3階のアート&デザインストア内にできたA/Dギャラリーを加えた数で、こちらは奈良美智の版画展でオープン。しかしそのしわよせでストア内の書籍売場がなくなってしまったじゃないか。それもこれも時代なのか、と嘆息するしかない短足おやじであった。

ニューアドレス、ニューワークス@オオタファインアーツ(2011/02/18~2011/04/01)
"New Space, New Works"@ワコウ・ワークス・オブ・アート(2011/02/18~2011/03/26)
荒木経惟「愛の劇場」@タカイシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム(2011/02/18~2011/03/26)
「CHINA FOTO」展@Zen Foto Gallery(2011/02/16~2011/03/30)

2011/02/18(金)(村田真)

G-tokyo 2011

会期:2011/02/19~2011/02/20

森アーツセンターギャラリー[東京都]

ゼロ年代の世界的なアートバブルの波に乗って急増したアートフェアだが、リーマンショック後も勢いはまだ続いてるのか。森美術館の階下で行なわれるこのアートフェアは、小柳、小山、ミヅマ、シュウゴ、ワコウなど中堅どころ(10年前までは“チビッコ”とも呼ばれた)が15軒集まったもの。ユニークなのは、作品売買は2日間だけにして、展示はその後も1週間(2/21-27)続けること。商売がからむとショバ代が高くつくのかもね。サイド2のピーター・マクドナルド、タロウナスのジョージェ・オズボルトらの作品に出会えたのが収穫。

2011/02/18(金)(村田真)