artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

「ヨコハマトリエンナーレ2011」記者会見

会期:2011/03/11

外国特派員協会[東京都]

会見場へ行くため有楽町駅前を歩いていたとき、大地が揺れた。有楽町駅は老朽化した高架のため電車が落ちてきたら困るので、なるべく駅から離れようとするが、反対側の高層ビルからガラスの雨が降ってきても困るので、道の真ん中へんにいることに。久しぶりぶりだなあ身の危険を感じたのは。不謹慎ながら、こういうときってアドレナリンが噴出してパカッと覚醒し、生きてることを実感するんだよね。揺れが収まってビルの20階にある会見場に行こうとするが、エレベータが動かず、関係者とともにしばらく待機。この間に美術評論家の中原佑介死去の報が飛び交う。結局、記者発表は中止となり、資料をもらって六本木まで歩いて帰宅。家のなかは食器棚から皿やグラスが半分くらい飛び出して床に破片が散乱、自室は数千冊の雑誌やカタログ類が膝くらいの深さまで万遍なく床に降り積もってまるで本の海。本が液状化することを初めて知った。しかしこの時点ではまだこれほどの大災害になるとは思いも寄らなかった。ヨコトリのほうはといえば、海外のアーティストが参加を尻込みしているとか、8月開幕なのに冷房が使えそうにないから延期だとかいろいろウワサが飛び交ったが、いちおう予定どおりやるみたい。

2011/03/11(金)(村田真)

レンブラント 光の探求/闇の誘惑

会期:2011/03/12~2011/06/12

国立西洋美術館[東京都]

同時代のフェルメールほど人気急上昇というわけにはいかないけれど、レンブラントも一定の支持を得ているわけで、日本でも数年にいちど大きな展覧会が開かれてきた。そのつど「光と影」をテーマにしたり、弟子たちとの関係に焦点を当てたりしてきたが、今回は「版画」。たしかにレンブラントは版画家としても卓越した才能を発揮したし、和紙を使ったことも興味深いけど、油絵に比べれば量産されてるし、それだけ安いし、色もないし、ちょっとお手軽感があるし、なんかサイドビジネスって感じがするんだなあ。同じ版による別刷りを2、3点並べられても、研究者には垂涎ものかもしれないけど素人は楽しめないよ。やっぱりレンブラントといえば重厚な油絵をがっつり見たいと思うのだ。もちろん、若いころの自画像ともいわれる《アトリエの画家》とか、絶頂期のころの《書斎のミネルヴァ》、愛人の肖像《ヘンドリッキェ・ストッフェルス》など胸やけしそうな油絵も、数は多くないけど何点か出ているので不満はないが。それにしても、この直後の原発事故から停電騒ぎを経たいまとなっては、「光の探求/闇の誘惑」というサブタイトルは皮肉としかいいようがない。

2011/03/11(金)(村田真)

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神奈川多摩美2011

会期:2011/03/06~2011/03/11

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

3階から団体展を見ながら降りたら、1階で上田雄三とか海老塚耕一とか聞いたことのある人たちが出してる玉石混淆の不思議な展覧会をやっていた。多摩美交友会神奈川支部の主催だそうだが、こういう展覧会に出すことにどんなメリットがあるんだろうと考えてしまった。

2011/03/10(木)(村田真)

建築・土木のある風景

会期:2011/03/03~2011/03/22

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

市民ギャラリー主催のコレクション展なので全館使うのかと思ったら、3階のいちばん奥まった場所でつつましく開催。ギャラリーの所蔵品から、横浜港周辺の歴史的建造物やベイブリッジをはじめとする工事中の風景を描いた絵を集めたもの。絵なので建築・土木の正確な記録にはならないが、逆に作者の、あるいは時代の気分が色濃く表われてその建造物に対する思いがよく伝わってくる。「?」と思ったのは制作年で、全61点のうち70年代以降の作品が大半を占めるが、なかでも79年が24点、88年が27点と、この2年だけで8割以上になる。79年が多いのは、この年に開港120周年記念として同ギャラリーで「横浜百景展」が開かれたから。88年が多い理由は不明だが、おそらく市制100周年の前年で、みなとみらい地区が整い、横浜博覧会をひかえて盛り上がったからだろう。でもそれなら89年の作品があってもいいはずなのに見当たらないし、それどころか88年以降の作品は1点もない。そういえば横浜美術館が開館したのは89年のことだから、市民ギャラリーの購入予算が削られたのかもしれない。どうでもいいけど。

2011/03/10(木)(村田真)

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第14回岡本太郎現代芸術賞展

会期:2011/02/05~2011/04/03

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

ワラ、竹、土などを積み上げて巨大な祠を建てたオル太(岡本太郎賞)をはじめ、黒い服に黒い髪の顔の見えない女性像をあっちこっちに配した望月俊孝(岡本敏子賞)、木の本棚をうずたかく積み上げた高野浩子、大型素粒子加速器みたいなものをつくった上田尚宏、ほかにも熊澤未来子の絵画や諸橋健太郎のインスタレーションなどなど。このコンペはほかに比べて破滅的でグロテスクな作品が多いけど、とくに今年は黙示録的ともいうべき作品が目立ったなあ。さすが「芸術は爆発だ」と喝破した芸術家の名を冠したコンペだけあるわい、と思ったら翌日やってきました大地震が。オル太の祠や高野の本棚は崩れなかっただろうか、心配だ。

2011/03/10(木)(村田真)

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