artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

第30回梓会出版文化賞 贈呈式

会期:2015/01/16

日本出版クラブ会館[東京都]

上野千鶴子さん、斎藤美奈子さん、外岡秀俊さん、竹内薫さんとともに選考委員を担当し、第30回は本賞にあけび書房、特別賞は高文研、原書房を選ぶ。第30回記念特別賞はみずのわ出版。そして新聞社学芸の賞は、ミシマ社と大阪大学出版会である。乾杯の挨拶まで90分もかかるくらい、各社の受賞のスピーチはとても長かったが、どれも味わい深い内容であり、感動的だった。選考側も、いまの社会状況を踏まえて選んだが、各社の歴史と理念は、予想以上にメディア、政治、地方、出版、知をめぐる諸問題を凝縮したものとなっていたのを確認できた。

2015/01/16(金)(五十嵐太郎)

東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶

会期:2014/12/13~2015/03/01

東京ステーションギャラリー[東京都]

資料、模型、絵画、映像、実物、インスタレーションなどを駆使して、その歴史を振り返る。東京駅周辺の変化を示す3つのジオラマを比較すると、改めてその激変ぶりに驚かされる。鈴木博之先生が最終講義の最後に、空から見る東京駅の画像をだして、中心部がこんなに変わった都市は他にないと指摘していたのを思いだす。ともあれ、やはり辰野金吾のデザインはあまりこなれていない気がする(西欧の様式建築に比べて)。このエリアだと、村野藤吾の銀行が一番カッコいい。また展覧会では、もとのドームを復元したばかりなので、軽んじられているかもしれないが、戦後の姿をもたらした設計の経緯をもう少し詳しく知りたかった。


東京駅模型

2015/01/15(木)(五十嵐太郎)

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96時間 レクイエム

『96時間/レクイエム』(監督:オリヴィエ・メガトン、製作・脚本:リュック・ベッソン)を見る。シリーズものらしく、ある意味ではキャラが安定しており、リーアム・ニーソンは最強だが、想像以上でも、期待以下でもない。ただ、新機軸となった誰が妻を殺したかも、謎解きというほどのものでもない。今回は家族を守る、あるいは復讐のために、敵を殺しまくる数が前より減り、元妻の喪失を少し重いトーンにしており、盛り上がりにやや欠ける。

2015/01/12(月)(五十嵐太郎)

奇跡の年 ANNUS MIRABILIS

会期:2015/01/10~2015/01/12

KATT 神奈川芸術劇場[神奈川県]

オノマリコ/扇田拓也の『奇跡の年』を観劇する。全体として独特の世界観があり、未来からの狂言回しを皮切りに、作家と編集者の会話を軸としながら、メタ的な構えで複数の物語が同じ舞台で同時進行する実験的な形式も面白い。だけど、あまりにバラバラに展開する個別のエピソードについていけず、パズルの精緻さが少し足りない気がした。

2015/01/12(月)(五十嵐太郎)

阪神淡路大震災20周年事業「加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸2015」

会期:2015/01/10~2015/01/18

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)[兵庫県]

KIITOの阪神淡路大震災20周年事業「加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸2015」を訪れる。山岸剛さんが継続的に被災地を撮影している写真展のギャラリーツアー、荒蝦夷の土方正志さんによる震災本のトーク、松村豪太さんらの街づくりセッションなどが行われていた。仙台在住の加川広重さんは、水彩による巨大絵画をせんだいメディアテークで発表し、それが神戸へ、来年はフランスに行く予定である。被災地で「これは映画ではない」と思った感覚は、正面以外の全方位に展開する風景だったが、幅16mに及ぶ絵はその雰囲気を思い出させる。今回は原発の絵画を展示し、宮本佳明の原発神社と対峙する。槻橋修さん、宮本さん、リアスアーク美術館の山内泰宏らとともに、シンポジウム「震災に向き合う表現~大地と記憶」に登壇したが、討議では、いまやかさ上げの土木工事によって、被災地では人為的な風景の破壊が進むことが話題になった。


左:山岸剛写真展「Tohoku - Lost, Left, Found」ギャラリートーク 右:槻橋修「失われた街」模型復元プロジェクト



ウェブサイト http://www.kagawaproject.com/

2015/01/11(日)(五十嵐太郎)