artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ダメ男ショートフィルムプログラム 全5作品/アカデミー賞ショートフィルムプログラム 全4作品
会期:2015/02/01~2015/03/15
Brillia SHORTSHORTS THIEATER[神奈川県]
ブリリア・ショートショートシアターの年間パスを購入したので、通うようになった。ダメ男ショートフィルムプログラムは、ちょっと悲惨すぎるような感じのものもあったが、3番目のStuart van Eysden監督の『テディ』(14分)は、コミカルなホラーで笑える。低予算、短い尺で、いかにその余白も感じさせる作品をつくることができるかが、短編映画の醍醐味である。アカデミー賞ショートフィルムプログラムは、さすがにクオリティが高い。短編は、巨額の予算を使うハリウッド一辺倒ではなく、作品がインターナショナルになりやすいのがよい。『ミスター・ヴォーマン』は、精神分析医と自らを神と名乗る受刑者の物語である。哲学的にも聞こえる会話が笑える。そして男はベルギーをこの世から消すと言い、本当にそれを起こしてしまう。一番よかったのが、Wei Hu監督の『チベットの埃』だった。北京やディズニーなどの書き割り写真を背景に、チベット遊牧民のさまざまな集合写真を撮るのだが、強烈な地域性と非場所の唐突なぶつかりあいが印象的である。そして撮影が終わり、最後に出現するフィクションのような本物の風景(=大自然の中の中国の建設現場)に驚かされる。ドキュメンタリーのような物語だ。
2015/02/16(月)(五十嵐太郎)
安藤忠雄建築研究所《東急大井町線上野毛駅 新駅舎》/吉田五十八《五島美術館》
[東京都]
安藤忠雄の改築による《上野毛駅》(2011)を見る。両側の駅舎をつなぐように、道路の上を屋根が横断し、そこに丸い穴を開ける。シンプルかつシンボリックな操作だ。《五島美術館》(1960)の茶道具取り合わせ展は、ミニチュアのセットに、いまのサブカルチャーに通じる感覚を読みとれて興味深い。それにしても、ゆがみや割れを尊ぶ美学は、ユニークである。あと、吉田五十八の建築は、住宅だといいけれど、なぜ大きいスケールだと、大雑把な和風になってしまうのか?
写真 上:安藤忠雄建築研究所《上野毛駅》 中・下:吉田五十八《五島美術館》
2015/02/15(日)(五十嵐太郎)
MOTLEY CRUE THE FINAL TOUR IN JAPAN
会期:2015/02/15
さいたまスーパーアリーナ[埼玉県]
大宮のさいたまスーパーアリーナで、モトリー・クルーのファイナル・ツアーを見る。紆余曲折はあったが、オリジナルのメンバーだ。初めて彼らが登場したとき、いい曲だが、下手なバンドだと思っていたが、実演は想像以上にちゃんとした演奏だった。トミー・リーのドラムセット、昔は360度の宙返りだけだったが、さらに空を飛んだ! ジェットコースターのようなレールを伝い、空中で何度か回転しながら、アリーナの真ん中くらいまでやってくる。笑ってしまうバカバカしい演出、最高だ。
2015/02/15(日)(五十嵐太郎)
Grow up!! Artist Project 2014 報告会
会期:2015/02/13~2015/02/19
アサヒ・アートスクエア[東京都]
GROW UP!! ARTIST PROJECT2014の報告会へ。大崎晴地の障害者の家プロジェクトは、バリアフリー化に向かうのではなく、その特殊条件をポジティブに読み替えて、既存の枠組みを外し、新しい建築的な提案を行なう。模型やドローイングが並び、建築畑の人にも興味深い内容である。次に毛利悠子の展示を見る。5階は、地下鉄の天井からの漏水に対する駅員のブリコラージュ的処置を記録したモレモレ東京のフィールドワークの成果を紹介する。4階はキッチンとトイレを使い、人工的に水漏れ現象を起すが、ワークショップで、参加者と水漏れ対策を行なうという。島貫泰介を司会に迎え、「即興建築としてのモレモレ東京」のトークを行なう。通行人の邪魔をせずに、天井からの漏水を近くの柱や壁に誘導し、床に帰着させるというシンプルな条件だが、その中間のデザインは実に多様だ。モレモレ東京の宝庫と聞いて、帰りに浅草の古い地下街(1955)に寄ったが、なるほど、すごい密度で存在する。これに対応する担当の人の、野生の思考というか、知恵がまた面白いらしい。
写真:上から、大崎晴地「障害者の家プロジェクト」、毛利悠子の展示、モレモレ東京のフィールドワーク、浅草の地下街
2015/02/14(土)(五十嵐太郎)
フィリップ・スタルク《スーパードライホール》
[東京都]
浅草へ。キリンプラザ大阪がなくなった現在、フィリップ・スタルクがデザインしたスーパードライホール(1989)が残っていると安心する。手前の高速道路を走る自動車が、テカテカの湾曲した黒い壁面に映り込むのが興味深い。また反対側の壁面は、スカイツリーが映る。バブルのときだからこそできた建築なので、時代の証言者として貴重な存在だ。
2015/02/14(土)(五十嵐太郎)