artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

New Creators Competition2012 展覧会企画公募 EXHIBITIONS

会期:2012/01/16~2012/02/18

静岡クリエーター支援センター 2Fギャラリー・3F[静岡県]

企画公募の審査を担当した静岡CCCの展覧会を見る。高野友美は雨を素材に用いて作品をつくり、音と映像によるインスタレーションを行なう。建築家の谷川寛は、計ることをテーマに、教室にさまざまなタイプの装置をおく。とりわけ川の分岐点をフィールドワークしたプロジェクトは労作である。そしてオフ・ニブロールの高橋啓祐は、暗闇の中で緊張感のある音と映像が絡む、小さな家型/巣箱が並ぶ空間を出現させていた。多くを語らないが、震災を含めて、多くのことを想像させる。新人とは言えないので、充分に巧い作品になるとは思っていたが、それ以上に圧倒的なクオリティだった。

写真=高橋啓祐《ウラヤマの鳥》

2012/01/30(月)(五十嵐太郎)

パパ・タラフマラ「SHIP IN A VIEW」

会期:2012/01/27~2012/01/29

THEATRE1010[東京都]

北千住にて、パパ・タラフマラの公演「SHIP IN A VIEW」を見る。駅前では、解散するということで、解散反対のポスターを持った人もいた。ほとんど予備知識がないまま鑑賞を始めたのだが、意味のわかる言葉を初めて聞くのは、開演しておよそ30分後である。かといって、海辺の街で具体的な物語がドライブするわけではなく、激しい身体運動と前衛音楽による、適度な抽象表現が観衆の記憶を刺激し、引喩の場を生む。集団による、異なる時間が同時存在するようなポリフォニー的なコレオグラフィーも迫力があった。最初から最後まで、一瞬も緊張が途切れることがない舞台である。解散ということで刊行された『ロング・グッドバイ』(青弓社)を読むと、その背景のひとつとして、日本における芸術活動支援の推移と問題にも触れられており、興味深い。また改めてアートとのコラボレーションが多いことがわかる。ヤノベケンジ、会田誠、インゴ・ギュンターなど。なるほど、以前、彼らのにぎやかな「パンク・ドンキホーテ」を見たときは、舞台美術がトラフだった。家型がどんどん崩れ、解体し、パズルのように変形し、最後は妻面も逆さになるという舞台である。

2012/01/28(土)(五十嵐太郎)

ヤノベケンジ:太陽の子・太郎の子

会期:2011/10/28~2012/02/26

岡本太郎記念館[東京都]

ある意味、ヤノベケンジは変わらないところが強い。サバイバルからリバイバルへ、というモチーフは3.11以降も続く。福島の原発事故を受けて、批判や悪口ばかり言ったり、悲観するのではなく、明るく前向きに、アートで希望を示すべく、記念館の前庭に、すくっとサンチャイルドの像が立つ。興味深いのは、彫像単体ではなく、これを設置するための秘密の神殿のような空間も一緒に構想していること。プログラムはウェディングチャペルだが、古今東西の宗教建築をサンプリングしたようなデザインである。

2012/01/27(金)(五十嵐太郎)

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北川貴好「フロアランドスケープ──開き、つないで、閉じていく」

会期:2012/01/14~2012/02/05

アサヒ・アートスクエア[東京都]

あいちトリエンナーレ2010や横浜トリエンナーレ2011に出品した北川も、武蔵野美術大学の建築出身のアーティストである。穴、水、植物を使った、これまでの集大成的な作品だった。ただし、屋外だとラディカルな手法が、室内だと少し違う意味をもつように思えた。個人的には、2フロアを展示に使ったことで、おそらくバックヤードで普段は見られない階段を体験することができたのがよかった。それにしても、しばらく訪れていなかったが、スタルクのスーパードライホールは強力な存在感を放つ。背後に見える東京スカイツリーのように一番高くなくても、純粋にかたちと色だけで、一度見たら忘れられないインパクトをもっている。ここまできたら、バブル期の遺産として長く残って欲しい。しばらく、日本はこういうデザインをつくらなそうだし。

2012/01/27(金)(五十嵐太郎)

第8回芦原義信賞・竹山実賞表彰式

会期:2012/01/21

武蔵野美術大学[東京都]

審査委員長を務めた第8回芦原義信賞の表彰式に出席した。今回は、不動産とデザインの新しいシステムを組み立てるブルースタジオの大島芳彦と、蓄光性の塗料を床の傷にすりこむ若手の戸井田雄が選ばれた。同窓会自体はどこの建築学科にもあるが、同日は竹山賞の表彰式や卒計講評会も開催され、大学の縦のつながりを確認できるイベントは、意外にほかではないと思う。武蔵野美術大学の卒計展示を見ると、模型が大きいこと、美大ならではの表現があり、目を楽しませる。同大の建築学科にアーティストの土屋公雄が教えるようになって、彼のスタジオでは1/1の卒計をつくるようになったらしいが、屋外にて展開した地面をめくり上げるようなインスタレーションが印象に残る。

2012/01/21(土)(五十嵐太郎)