artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
長谷川豪 展 スタディとリアル
会期:2012/01/14~2012/03/24
TOTOギャラリー・間[東京都]
思い切りがいい、作品構成だった。大きなテーブルの端にさまざまなスケールでプロジェクトの模型を置く。とくに興味深いのは、この展覧会を東日本大震災で被害を受けた石巻の幼稚園に建物を寄贈するプロジェクトに活用したことだ。屋外に1/1の鐘楼を建設し、会期が終わったら、現地に移築する。通常、建築展は、作品が商品化され、市場に流通するアートとは違い、終了後に多くの展示物が廃棄されてしまうが、このリサイクルは素晴らしい。
2012/01/20(金)(五十嵐太郎)
Proto Anime Cut 展
会期:2011/01/20~2012/06/06
Kuenstlerhaus Bethanien(2011/1/20~2011/3/6)/Dortmunder U Center for Art and Creativity(2011/7/1~2011/10/23)/Espai Cultural de Barcelona(2012/1/25~2012/3/25)/La Casa Encendida(2012/4/15~2012/6/6)[ドイツ、スペイン]
六本木にて、ステファン・リーケルスやデイビッド・ディヒーリらと、ベルリン発の日本アニメ展「Proto Anime Cut」に関する打ち合せを行なう。庵野秀明、押井守、森本晃司、渡部隆らの作品における建築・都市・風景に焦点をあてる好企画だ。特に庵野自身が撮影した風景写真も入っているのは、貴重だろう。展示そのものは見てないが、素晴らしいカタログが完成している。是非、日本に巡回できるといい。
2012/01/20(金)(五十嵐太郎)
御厨貴先生退職記念シンポジウム─権力の館をめぐって─
会期:2012/01/18
東京大学[東京都]
御厨貴の『権力の館を歩く』をテーマとした最終講義と座談会が行なわれたが、同書は各節がそれぞれ論文に発展しそうな一大鉱脈を発掘した本である。一般的に政治と権力の結びつきが弱いとされる日本において、どのような現場で空間と政治が結びつくかを読み込む。かといってフーコーのようなアノニマスな権力でもない。例えば、由比ケ浜の鎌倉文学館はかつて佐藤栄作首相の鎌倉別邸に使われた。三島由紀夫「春の雪」にも描かれた折衷的な洋館ではあるが、欧米の基準から見ると、これは超豪邸とは言えない。日本建築の権力表象は興味深いテーマだ。
2012/01/18(水)(五十嵐太郎)
ヴァレリオ・オルジャティ展
会期:2011/11/01~2012/01/15
東京国立近代美術館[東京都]
駆け込みで最終日に訪れた。スイスの建築家、ヴァレリオ・オルジャティは、とても知的な展示を行なっている。高台の1/33の模型群と、床に配した図面、映像、実物(部分)、そして彼を触発してきたイメージ。東京都現代美術館の建築展が提示する「これからの感じ」という雰囲気を見せるタイプとは大きく違う。ジョセフ・コスースのコンセプチュアル・アートをほうふつさせるような仕かけが、われわれの思考に「建築」を喚起させる。
2012/01/15(日)(五十嵐太郎)
玉置順/玉置アトリエ《成田山東京別院 深川不動堂》
[東京都]
見学したときは日曜で、現地は大にぎわいだった。なるほど、ここは宗教が生きていると実感できる場所である。既存部分の本堂を壊さず、むしろうまくとりこみながら、増改築を行なう。梵字をベースにした装飾的な外皮と、舞台装置としてつくられた内部空間を意図的に分離したデザインは、ポストモダン的と言えるかもしれない。変化が嫌われる神社に対し、進化を続ける仏教建築の現在形として興味深い試みだ。室内で行なわれる炎の護摩/祈祷は、太鼓を連打してクライマックスを迎え、凄まじい迫力である。
2012/01/15(日)(五十嵐太郎)