artscapeレビュー
福住廉のレビュー/プレビュー
NEW WORLD
会期:2010/01/30~2010/02/28
Island[千葉県]
千葉県柏に新たにオープンしたIslandのオープン記念展。淺井裕介、板垣賢司、いちむらみさこ、岩永忠すけ、臼井良平、遠藤一郎、大田黒衣美、大庭大介、加藤愛、川染喜弘、栗原森元、栗山斉、山本努の14人(組)が参加した。倉庫のように広い贅沢な空間を、それぞれの作品が埋め尽くした。白い壁面はもちろん、天井の剥き出しの梁にまで拡張した淺井の泥絵は、マスキングテープを剥がした痕跡を絵柄に取り入れ、剥がしたテープも再利用するなど、新たな展開を見せていた。
2010/02/22(月)(福住廉)
SEXES
会期:2010/02/19~2010/02/21
素人の乱シランプリ[東京都]
ほんとうにおもしろい表現とは、何も言うことができなくなるのかもしれない。ということをまざまざと実感させられた展覧会。ことの経緯と詳細を詳しく知りたければ、アーティストのひさつねあゆみのブログへ。ただ、ひとつ確かにいえることは、ミラクルを呼び込み、それをしっかりと捕まえて、こちらにすぐさまポンと投げ返してくるスピードとコントロールに、同展会場の素人の乱シランプリ店主であり、同展をプロデュースした山下陽光の類稀な才覚があること。ほんとうに大切なものは、結局のところ、こういうところにしかないのではないだろうか。
→ひさつねあゆみのブログ
2010/02/21(日)(福住廉)
新宮さやか展─陶 黒い蝕花─
会期:2010/02/05~2010/03/02
INAXガレリアセラミカ[東京都]
陶芸作家、新宮さやかの個展。植物の種や花びらを抱えるほど大きなサイズで制作した「枯れた時間の蝕」シリーズを発表した。特徴的なのは、おしべとめしべの一本一本を忠実に再現した繊細な造形と、炭のように真っ黒な色合いによる暗い迫力。過剰に装飾的になりすぎることもなく、かといって物質的な存在感に居直るわけでもなく、ひじょうに奇妙な物体をつくりだしている。その違和感は、「生命」の誕生や輝きを象徴する種子や花弁が「死」と直結した焼け焦げた黒によって表現されるという落差に由来しているのかもしれない。陶芸にとって本質的な「焼く」という行為。ほとんどの場合、それは作品の後景に隠されているが、新宮の場合は、むしろそれを自己言及的に前面化することによって、陶芸が内側に抱える「死」をよりいっそう強調しながら引き出している。
2010/02/18(木)(福住廉)
堀川紀夫 展
会期:2010/02/08~2010/02/20
ギャラリー檜A[東京都]
新潟の前衛芸術集団「GUN」のメンバーだった堀川紀夫による個展。鮮やかな青を下地にして、抽象的な文様が無限に反復する平面作品などを発表した。「GUN」といえば、1970年、広大な雪原に農薬散布のための機械で絵具をぶちまけた「雪のイメージを変えるイベント」が知られているが、今回の平面作品も距離感を失いながら雪や氷の内側に深く入り込んでいくような感覚が強く打ち出されていた。そうしたなか、同じパターンを踏まえながらも、一点だけ赤い作品が展示されていたが、ここに厳しい条件に拘束された状況を突き抜ける突破口が仮託されているように見えた。
2010/02/18(木)(福住廉)
柴田祐輔 仮定ビート
会期:2010/02/03~2010/02/14
Art Center Ongoing[東京都]
「5th Dimension」展に参加していた柴田祐輔の個展。Ongoingの道路に面した外ガラスに「Yシャツ95円」などのクリーニング店のポップ広告を、2階の窓ガラスには「エステシルク」という怪しげな文字を、それぞれ貼りつけた。センスゼロの蛍光色がなんともキッチュでけばけばしい印象を強くしているが、展示の内容はじつにミニマル。家電量販店などで多用されている冷たい照明のもと、高級感を装ったフェイクで覆われた建物の外壁を打ち立て、その前で暗闇のなかで瞬く光の写真などを発表した。現実的な実在よりも、それらとは無関係なイメージに強いリアリティを感じるシミュラークルがモチーフとなっているようにも見えるが、そこには記号の戯れを嘯く虚勢もニヒリズムも見られない。ただ、冷たい光がのっぺりとした世界をひたすら照らし続けている。言葉のほんとうの意味で、フラットな世界を見せようとしていたようだ。奥行きもなければ、影もない、ほんとうの平面世界。照明を反射する黒いヘルメットと、暗闇の中で白く輝く光は、どこかで反転しながら通じ合っているようにも見えたが、そのようにして「深読み」することそのものが、深さを欠いた平面に安心できない私たちの弱点なのかもしれない。キッチュな装いとは裏腹に、おそろしい作品である。
2010/02/12(金)(福住廉)