artscapeレビュー
新宮さやか展─陶 黒い蝕花─
2010年03月01日号
会期:2010/02/05~2010/03/02
INAXガレリアセラミカ[東京都]
陶芸作家、新宮さやかの個展。植物の種や花びらを抱えるほど大きなサイズで制作した「枯れた時間の蝕」シリーズを発表した。特徴的なのは、おしべとめしべの一本一本を忠実に再現した繊細な造形と、炭のように真っ黒な色合いによる暗い迫力。過剰に装飾的になりすぎることもなく、かといって物質的な存在感に居直るわけでもなく、ひじょうに奇妙な物体をつくりだしている。その違和感は、「生命」の誕生や輝きを象徴する種子や花弁が「死」と直結した焼け焦げた黒によって表現されるという落差に由来しているのかもしれない。陶芸にとって本質的な「焼く」という行為。ほとんどの場合、それは作品の後景に隠されているが、新宮の場合は、むしろそれを自己言及的に前面化することによって、陶芸が内側に抱える「死」をよりいっそう強調しながら引き出している。
2010/02/18(木)(福住廉)