artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
神戸アートマルシェ2012
会期:2012/09/28~2012/09/30
現在関西では毎年京阪神でアートフェアが開催されており、一見盛況を感じさせるものの供給過剰も囁かれている。「神戸アートマルシェ(以下、KAM)」は3つのフェアのなかで最も小規模だ。しかし、今年のKAMを観賞して、地方発の小規模アートフェアのサバイバルについて考えさせられた。KAMの選択は地元密着である。KAMでは画廊だけでなく、地元兵庫県の丹波焼の若手有志や神戸芸術工科大学の参加を受け入れている。また、販売の中心価格帯は10万円以下で、裕福なコレクターでなくても手の届く作品が多かった。主催者はKAMを、神戸に現代アートのマーケットをつくるための種まきと位置付けており、参加画廊も背伸びをしていない。この堅実な姿勢には好感が持てたし、他のアートフェア主催者にも参考になるのではないか。
2012/09/28(金)(小吹隆文)
椎原保 展 ephemera/ここのむこう
会期:2012/09/25~2012/10/07
ギャラリーアーティスロング[京都府]
画廊の備品のほか、懐中電灯、レンズ、水、火、再帰性反射布など野素材を、互いが緩やかに関係するよう点在させたインスタレーション。見た目はスカスカな空間をゆっくり歩くと、見えてくるのは、光の多彩なバリエーションだ。じっくりと空間を味わううちに、自分の日頃の美術鑑賞が、いつの間にかワンパターンになっていたことに気付かされる。慣れないスポーツや柔軟体操をして筋肉や身体の動きに改めて気付かされるように、椎原の個展は凝り固まった精神をほぐしてくれた。
2012/09/25(火)(小吹隆文)
KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム ビリー・カウィー「Tango de Soledad/The Revery/In the Flesh」
会期:2012/09/22~2012/10/28
京都芸術センター[京都府]
イギリスを拠点に国際的に活動するビリー・カウィーによるビデオ・インスタレーション。自ら振付・作詞・作曲・演奏を手掛けたダンス作品を、3D映像で上映している。3つの作品は、映像に対して、水平、見下ろす、見上げる視点で見るよう構成されており、それらはどれもダンサーの細かな表情や息遣いまで感じられるリアルなものだった。ダンサーが手を差し伸べてきた時は、3Dと知っているにもかかわらず、つい手が伸びそうになったほどだ。バーチャルではあるが、舞台公演ではありえないほど間近でパフォーマンスが見られるのは、確かに魅力的である。テクノロジーにより身体感覚を増幅させるその手法に、大きな可能性を感じた。なお、ビリー・カウィーは3Dと生身のダンサーが共演するプログラムを模索中で、京都滞在中に日本人ダンサーと3D映像を制作、帰国後にイギリスで撮影した他のセクションを加えて編集し、来年再び京都に戻って数人の生身のダンサーとのコラボレーション作品を発表する予定である。
2012/09/25(火)(小吹隆文)
プレビュー:NAMURA ART MEETING ’04-’34 VOL.4 臨界の創造論
会期:2012/10/20~2012/10/21
名村造船所跡地[大阪府]
21世紀初頭の30年間の芸術の変遷を追うことをテーマに、2004年から始まった30年間計画のプロジェクト。4回目の今回は、昨年以来の日本の未曽有の状況を受けて初心に立ち返り、さまざまな人々と語り合う場を提供する。プログラムは、宇治野宗輝、梅田哲也、雨宮庸介、クワクボリョウタ、ヤノベケンジ、DOMMUNE/Rubber(()Cementによるインスタレーション&ライブ・パフォーマンスと、宇川直弘、服部滋樹、水田拓郎、今野裕一、タニノクロウ、DJ SNIFF、山川冬樹、佐々木中らによる真夜中ミーティング&ダイアログ。濃密な一夜になることは間違いない。
2012/09/20(木)(小吹隆文)
プレビュー:鉄道芸術祭VOL.2 やなぎみわプロデュース「駅の劇場」
会期:2012/10/13~2012/12/24
アートエリアB1[大阪府]
京阪電鉄「なにわ橋駅」のコンコース内に位置するという、ユニークな場所性を持つアートエリアB1。その特性とポテンシャルを最大限に引き出すべく開催されるのが、この「鉄道芸術祭」だ。2010年のvol.0では鳥瞰図絵師・吉田初三郎の沿線案内図や鉄道の記録映像が展示され、昨年のvol.1ではゲストアーティストの西野達やその他のアーティストらにより、沿線施設を巻き込んだ独創的な企画が行われた。今年のvol.2ではメインアーティストとしてやなぎみわを招き、19世紀ヨーロッパで流行した「パノラマ館」をベースにした舞台装置を構築。やなぎの「案内嬢プロジェクト」や演劇公演が行なわれるほか、劇団「維新派」の松本雄吉、劇作家・演出家のあごうさとしらによるパフォーマンスやトークが行なわれる。特異なロケーションを生かした飛びきり個性的な芸術表現の誕生を期待したい。
2012/09/20(木)(小吹隆文)