artscapeレビュー
三瀬夏之介 展「肘折幻想」
2010年11月01日号
会期:2010/10/02~2010/10/23
イムラアートギャラリー[京都府]
以前は奈良県在住で、関西で頻繁に展覧会を行っていた三瀬だが、山形県に移住してからはとんと御無沙汰。最近は「東北画は可能か?」なんて言い始めて、ますます実態が分からなくなっていた。それだけに本展は、彼の現在を知る貴重な機会となった。山形の肘折温泉で制作した《肘折幻想》は、十曲一隻の大作屏風。作風は一見以前と変わらないが、無軌道すれすれの混沌というよりは、沈静な趣をたたえた作品だった。会期初日に本人と話す機会を得たが、キーワードの「東北画」とは、独自の様式ではなく、自分が乗り越えるべき壁として設定されているように感じた。三瀬は今までもずっと自分で課題を設定し、それを乗り越える過程で進化を続けてきた作家だ。山形という新たな環境、「東北画」という新たな課題を得た三瀬が、今後どのように展開して行くのか、期待が募る。
2010/10/02(土)(小吹隆文)