artscapeレビュー
上阪伸之介 版画展[木とくさの名は]
2009年09月01日号
会期:2009/07/28~2009/08/02
ギャラリーすずき[京都府]
天地約2メートル、左右約5メートルの巨大木版画が2点。どちらもクジラがモチーフになっている。壁に貼られた作品《暁》は、空中を浮遊するクジラの一部が都市や山脈、水鳥などに変容している。床の作品《木とくさの名は》では、クジラは島として表現され、手前の陸地で食物連鎖が繰り広げられている。悠久の自然に対する憧憬を巨大なクジラに託しているのは明らか。そこに木版画特有のやわらかい線や遊び心あふれるメタモルフォーゼが加わって、作品が教条的になるのを防いでいるのだ。心が解きほぐされるような大らかな作品を前に、外の猛暑をしばし忘れた。
2009/07/28(火)(小吹隆文)