artscapeレビュー
美術の中のかたち──手で見る造形 藤本由紀夫 SHADOW─exhibition obscura
2009年09月01日号
会期:2009/07/25~2009/11/29
兵庫県立美術館[兵庫県]
美術作品を触って鑑賞する本展。元々は視覚障害者を念頭に置いて始められた企画で、今年で20年の歴史を持つ。近年は現役作家と館蔵品のジョイントが売りになっているが、今回はサウンド・アーティストの藤本由紀夫が登場。自作のほか、ロダンとブールデルのブロンズ像、高松次郎の絵画、ルドン他の版画作品を組み合わせて展覧会を構成した。絵画や版画は触ることができず、本展本来の意図からずれているのだが、藤本の狙いは障害者と健常者の区別を取っ払って、「人が美術作品を理解するとはどういうことか」を根源的に問いかけることにあった。敢えて薄暗い部屋に作品を置くことで、ホワイトキューブ空間では絶対に得られない作品との新たな接触を演出したのだ。本展の歴史のなかでは明らかに異端だが、美術館に通い慣れたディープなファンほど考えさせられる企画である。
2009/07/25(土)(小吹隆文)