artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
橋本大和 写真展 秘密
会期:2014/02/25~2014/03/09
NADAR/OSAKA[大阪府]
写真家の橋本大和は、過去に3度個展を行なっている。4度目となる本展がそれらと違うのは、新作ではなく過去15年間に撮影した作品のなかから選んだ約20点を展示していることだ。そのきっかけは、彼がカラー写真の自家プリントを始めたことである。今までプリンターに託していた部分を自ら行なうようになったことで、改めて自分の世界を再構築しようと思ったのかもしれない。そのニュープリントは三原色がやや強めに発色しており、過去に見た同じ作品とは少し印象が違っていた。筆者自身は今回の方が好きである。また、本展ではそれぞれの作品が元々持っていた文脈が切断・再編集され、新たな世界を構築していた。それらは具体的な物語を綴っているわけではないが、短編小説のような趣をたたえており、作者の編集力が感じられた。
2014/03/04(火)(小吹隆文)
玉本奈々 向き合う時間
会期:2014/02/28~2014/03/12
枚方市立サンプラザ生涯学習市民センター 市民ギャラリー[大阪府]
画面に布やガーゼ、衣服などを貼り込み、鮮烈な色彩とともに表現することで、生命感あふれる空間をつくり出す玉本奈々。彼女の大規模な個展が、現在の居住地である大阪府枚方市の公立ギャラリーで行なわれた。枚方市では、昭和14年3月1日に旧陸軍火薬庫の爆発事故が起きたことから、同日を「枚方市平和の日」に定めており、毎年さまざまな記念事業が行なわれている。本展もその一環として企画されたが、展覧会自体にイデオロギー色は薄く、彼女の作品に備わる生命礼賛的な要素をクローズアップしたものとなった。出品作品数は36点。新作、近作が中心だったが2000年代初頭の初期作品も含まれており、モチーフや色使いなど彼女の画業の変遷が伝わる構成となった。玉本作品を見慣れない者にとって、格好の入門編となったであろう。また、本展のために地元の小中学校、養護学校と行なったワークショップの記録映像と作品も展示されていた。玉本自身、この経験には感じるところがあったようで、今後の制作になんらかの影響を与えるかもしれない。
2014/02/28(金)(小吹隆文)
プレビュー:Future Beauty 日本ファッション:不連続の連続
会期:2014/03/21~2014/05/11
京都国立近代美術館[京都府]
20世紀後半以降、世界から注目を浴びている日本のファッション。その豊かな創造性・独自性を、1960年代の森英恵、1970年代の高田賢三と三宅一生、1980年代の川久保玲と山本耀司をはじめとするファッション作品100点以上、並びに映像や関連資料などで浮き彫りにする。日本のファッションの特徴として挙げられるのは、日本の伝統的な美意識とも共通する、平面性、素材の重視、無彩色だが、本展ではそれらに加えて、日本の高度な工芸技術や各時代の前衛芸術との関わりにもスポットを当てる。さらに、21世紀以降顕著になったアニメ、漫画などのサブカルチャーや、インターネットとの関係、高度にシステム化されたファッション制度からの逸脱にも触れ、今日のファッションについても考察する。
2014/02/20(木)(小吹隆文)
プレビュー:新平誠洙/岸本光大「Surge/リブログ」、ITO+BAK(伊東宣明+朴永孝)「0099」、LOST CONTROL 本田アヤノ+中田有美
会期:2014/03/11~2014/03/30
海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]
京都市立芸術大学出身あるいは大学院在籍者を中心とする6作家が、3つの2人展を同時開催する。画家の新平誠洙と岸本光大が目指すのは、それぞれの作品を展示して絵画による偶発的な状況の構築。映像をはじめさまざまなジャンルの作品を制作する伊東宣明と韓国人作家の朴永孝は、0から99までの数字を記した紙を撮影した映像をリアルタイム編集で上映する(画像)。そして彫刻家の本田アヤノと画家の中田有美は、両者の作品を一つの空間に並べることで予定不調和な空間をつくり上げようと試みる。若手によるユニークな企画が3つ並ぶことの相乗効果はもちろんだが、彼らが会場の広大なスペースをいかに使いこなすのかにも注目したい。
2014/02/20(木)(小吹隆文)
プレビュー:三瀬夏之介 風土の記─かぜつちのき─
会期:2014/03/09~2014/05/11
奈良県立万葉文化館[奈良県]
奈良県出身で、現在は東北を拠点に活動する三瀬が、故郷の美術館で大規模な個展を開催する。彼の作品の特徴は、自分が暮らす土地の文化や風土を鋭敏に感受し、そのエッセンスを自己というフィルターを通して表出させる点にある。それは、絵画を通して日本を見つめ直し、日本画とは、日本で絵を描くこととは、を問い続ける真摯な作業と言えよう。本展では代表作に加え新作も発表され、関西のファンには見逃せない機会となる。
2014/02/20(木)(小吹隆文)