artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
カワトウ写真展「京阪神フロンティアザッピング」
会期:2014/03/17~2014/03/29
Port Gallery T[大阪府]
京阪神の空き地を渉猟し、タイポロジーよろしく同一条件で撮影し続けているカワトウ。本展では、1点を除きすべて同一サイズの縦位置写真約390点でギャラリーの壁面を埋めた。彼の作品の魅力は何だろう。都会の一角にぽっかりと空いた空き地を通して、現代社会を掘り下げる、建築史を語るなど、いろいろなアプローチができそうだ。ちなみに筆者が興味を持ったのは、よそ行きではない都会の素顔(すっぴん)が見える点。特に住宅地では、表通りからは窺えない家屋の裏側が露わになる。整理整頓が行き届いた家もあるが、なかにはお世辞にも綺麗とは言えない家も。その油断した風情が愛おしい。
2014/03/17(月)(小吹隆文)
HUB-IBARAKI ART COMPETITION EXHIBITION
会期:2014/03/07~6カ月間(予定)
茨木市立生涯学習センターきらめき、茨木市市民総合文化センター(クリエイトセンター)、茨木市市民会館(ユーアイホール)、茨木市立市民体育会館、茨木市福祉文化会館(オークシアター)、茨木市立男女共同センターローズWAM、茨木市立中央図書館[大阪府]
大阪府茨木市の公共施設を舞台に、公募審査を通過した美術家たちが作品を制作・展示するプロジェクト。中島麦、山城優摩、N N.P.O、小宮太郎、高木義隆、藤本絢子、稲垣元則の7組が審査を通過し、それぞれのプランをつくり上げた。作品ジャンルは、絵画、立体、インスタレーション、写真などさまざまで、なかには地元市民を取材して小学校の記憶を模型とスケッチで再現する作品もあった。実際、作品の完成度には差があり、高いハードルを乗り越えて実現したと思しき作品がある一方、残念と言わざるをえないケースも幾つか見受けられた。今年が初回ということもあり、施設サイドとの意思疎通が不調だったのかもしれない。展示期間が約半年と長いので、今後も関係各位がコミュニケーションを図ってプロジェクトの質を高めていってほしい。来年以降もプロジェクトを継続すれば、市民の関心も徐々に高まって良質な催しに育つのではなかろうか。
2014/03/15(土)(小吹隆文)
ITOH+BAK「0099」/新平誠洙 岸本光大 展「SURGE/リブログ」/「LOST CONTROL 本田アヤノ+中田有美」
会期:2014/03/11~2014/03/30
海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]
京都市立芸術大学出身あるいは同大学院在籍者を中心とする6名が、3つの2人展を同時開催。伊東宣明と朴永孝のユニット「ITOH+BAK」は、00から99までの紙を京都市内各所に配置して、ビデオカメラでズームアウトした映像を1カ所100パターン撮影し、プログラミングを用いてリアルタイム編集する映像作品を出品(画像)。新平誠洙と岸本光大の画家2名は、岸本の作品フォーマットのもとで両者の作品が混在する展示を行なった。また、本田アヤノと中田有美は、それぞれが立体と絵画を持ち寄って空間をつくり上げていた。どの展示も高品質で、スペースを十分に使い切っていたのが素晴らしい。また、作家同士の協力関係が3展とも異なっていた点も興味深かった。
2014/03/14(金)(小吹隆文)
本郷仁 展 both sides of it
会期:2014/03/08~2014/03/29
CAS[大阪府]
本郷仁は、視覚や知覚をテーマにしたガラス造形を手掛けている作家だ。本展では2室で展示を行なった。1室は装置型作品、もう1室は立体作品だったが、筆者が惹かれたのは前者である。それは、3本のアームの先に光源を取り付けた巨大な機械がゆっくりと回転し、部屋の中央に吊られた鏡を照らすというもの。壁面には光源から放たれた光と鏡の反射光が映るのだが、それらはシンプルな円形や楕円形だけでなく、日食などの天体現象を思わせる形態など、実に多様な表情を見せてくれるのだ。また、装置の精度が高いのか、モーター音などのノイズがほとんど聞こえないことにも驚かされた。無音の空間で繰り広げられる、人工物なのに神秘的な光のショーだった。
2014/03/10(月)(小吹隆文)
東學 墨絵展─墨の糸が織りなす、愛しき命たち─
会期:2014/03/04~2014/03/19
あべのハルカス近鉄本店ウイング館9階 SPACE 9[大阪府]
あべのハルカス近鉄本店(百貨店)のグランドオープンにより、新たに誕生した多目的空間「SPACE 9(スペースナイン)」。そのオープン第2弾として開催されたのが本展だ。東は演劇や舞台のポスター等で知られるアート・ディレクターであり、同時に墨画師としても活躍している。墨画は主に妖艶な女性たちによる耽美的な世界を描いており、面相筆による繊細な描写力と、迫力ある大画面の構成力が特徴である。本展でも全幅約11メートルの大作《花戰》をはじめとする大作5点と小品が展示されており、やや詰め込み過ぎではあったが、彼の世界を堪能することができた。これまでの仕事の関係か、彼の個展は演劇系の空間で行なわれることが多い。今後は美術館やギャラリーでも彼の大作を見たいものだ。
2014/03/07(金)(小吹隆文)