artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
Re: Planter exhibition「宇宙」
会期:2014/02/05~2014/02/18
DMO ARTS[大阪府]
エコ思想を背景に持つ21世紀型盆栽とでも言おうか、とにかくユニークな作品だった。Re: planterこと村瀬貴昭は京都在住の植栽家で、本展では球形のガラスケースの中に植物や苔を植えた作品を多数出品していた。ケースの屋根部分には光源となるLED照明が仕込まれており、植物は数週間に一度程度の水やりだけで成長する。不完全ではあるが、閉じた循環系をつくり上げているのだ。また、ケースを机上に置くためのスタンドや栽培道具一式など、全体のパッケージやデザインにも深いこだわりが感じられた。優れたデザイン性を伴うことで、本作は盆栽やガーデニングに馴染みがない人にも十分アピールするだろう。
2014/02/06(木)(小吹隆文)
越野潤 eight white rectangles
会期:2014/01/25~2014/02/16
ギャラリーあしやシューレ[兵庫県]
会場の壁面には、8点の白い長方形の絵画が点在している。それらはリシツキーのロシア・アヴァンギャルド絵画を3次元空間に解き放ったかのようであり、厳密に設計された配置が空間に美しい均衡をもたらしていた。素人目には判別し難いが、8点はすべて異なる種類の白で着色されているとのこと。着色はカゼインテンペラ技法が用いられている。また、展示室の奥にある細長い回廊状の空間では、8点の白い小品が展示されていた。こちらの特徴は、支持体が半透明の樹脂板であることと、シルクスクリーンで着色されていることだ。これにより作品が内側から鈍く発光するような効果が得られ、平面表現の新たな可能性に気付かされた。
2014/02/06(木)(小吹隆文)
宮本承司 木版画展
会期:2014/01/31~2014/02/16
アートゾーン神楽岡[京都府]
若手ながら、お寿司をモチーフにした木版画作品で注目を集めている宮本承司。その特徴は、モチーフを半透明で表現していることと、シャープな造形が醸し出す無菌的な質感である。本展では、代表作のお寿司や果物のシリーズだけでなく、葛飾北斎の《冨嶽三十六景》を食べ物で表現した愉快なパロディーや、小説の挿絵を想定して描いた連作など、新しい試みも見られた。また版木の展示や、来場者へのお土産ハガキを公開制作するなど、サービスもたっぷり。意外にも今回が地元関西で初個展ということもあり、本人が「全部のせ」と言うとおりの大盤振る舞いであった。
2014/02/02(日)(小吹隆文)
アンドレアス・グルスキー展
会期:2014/02/01~2014/05/11
国立国際美術館[大阪府]
過去にグルスキーの作品を見た経験はあるが、一度に51点も見たのは今回が初めて。おかげで今まで気づかなかったものが見えてきた。それは彼の作品が持つ“強制力”とでも言うべきものだ。グルスキーは「自分の作品にはメッセージはない」と言うが、実際に作品を見ると、彼が見たもの(見たかったもの?)をグイグイと押し付けてくる。観客の選択肢は、グルスキーの視線を100%受け入れるか拒絶するかの二通りしかなさそうだ。巨視と微視が同居する大画面には人間の視覚を超えた世界が広がっており、最初はその超越感に感動するが、やがて快感と閉塞感が入り混じった不思議な感情が頭をもたげてくる。その感じは、写真よりもミニマルアート作品が放つ圧迫感に近い。
2014/01/31(金)(小吹隆文)
鍛冶谷直記 展「JPEG」
会期:2014/01/21~2014/02/15
猥雑な盛り場など、日本各地に残る薄っぺらな風景を撮影した写真作品《JPEG》で知られる鍛冶谷直樹。東京都写真美術館で先月まで開催された「日本の新進作家 vol.2」に選出され、蒼穹舎から初の写真集『JPEG』が出版されるなど、その評価は着実に高まりつつある。出版を記念した本展で改めて彼の作品を見ると、画面に写し出されたグダグダな風景に対して、恥ずかしさと愛着が入り混じった複雑な感情を抱かずにはおれない。駄目な奴、ダサい奴とわかっているが、縁を切る気になれない旧友、的なものであろうか。同時に、これらの風景は極めて昭和的であり、今後急速に姿を消すかもしれないことを実感した。
2014/01/23(木)(小吹隆文)