artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2023年2月1日号[テーマ:手も眼も使って考え、暮らす──現代のデザイナーの思考回路を覗き見る5冊]
2023年02月01日号
生活のなかでの観察・思考や、アイデアを形にするまでの密かな知的興奮。「デザインスコープ─のぞく ふしぎ きづく ふしぎ」(富山県美術館で2022年12月10日〜2023年3月5日開催)の参加作家が登場したり書いた本を中心に、つくることとその手前にある日常の見方のそれぞれの個性が浮かび上がってくる5冊を選びました。
今月のテーマ:
手も眼も使って考え、暮らす──現代のデザイナーの思考回路を覗き見る5冊
1冊目:デザインあ 解散!
Point
NHK Eテレ『デザインあ』内の人気コーナー「解散!」のビジュアルブック。しめじ、電卓、みかん──身近にあるモノを分解して並べるというシンプルな工程を経て、まったく異なる表情が立ち上がってくるさまは目が離せません。読んだ後しばらくは、視界に入ったあらゆるモノを頭の中でついつい分解してしまいます。
2冊目:りんごとけんだま
Point
りんごとけん玉、そしてそれを持つ自分の身体を介在させることで、ニュートンの万有引力、ひいては自分と地球の関わりまで、イメージの力を及ばせることができる──そんな気づきを得られる絵本。鈴木康広氏のスケッチは一見ソフトな印象でありつつも、空想力も地道な鍛錬の積み重ねであることが垣間見えます。
3冊目:waterscape 水の中の風景
Point
身近な素材にある小さなひとひねりを加えると、見たことのない風景が立ち上がる。領域を越え活躍するデザイナー・三澤遥氏が、本書では水中生物の棲む多様な環境を水槽の中に再構築しています。個々の設計図と、それに添えられたアイデアの出発点を明かす解説を読んでから写真に戻ると、より風景が豊かに見えてきます。
4冊目:SPREAD by SPREAD
Point
ランドスケープとグラフィックを軸に人の記憶と想像力を拡げるクリエイティブユニットSPREADが得意とする、色をコミュニケーション媒介とした制作物。本書は彼らの活動開始からの15年間を記録した作品集で、表紙の鮮やかな朱色は「人類が用いた最初の色」のひとつだそう。質感の豊かさも含めて手元に置きたい一冊。
5冊目:つくる理由 暮らしからはじまる、ファッションとアート
Point
つくる理由=生きる理由とも言い換えられるのではないか。著書『拡張するファッション』で知られる編集者の林央子。彼女が美術家やデザイナーなど、多様な分野の「つくる」人々の声を集めた本書の終盤、「デザインスコープ」展参加作家の志村信裕も登場し、不可分である暮らしと制作活動について語っています。
開館5周年記念 デザインスコープ─のぞく ふしぎ きづく ふしぎ
会期:2022年12月10日(土)~2023年3月5日(日)
会場:富山県美術館(富山県富山市木場町3-20)
公式サイト:https://tad-toyama.jp/exhibition-event/16596
[展覧会図録]
「開館5周年記念 デザインスコープ─のぞく ふしぎ きづく ふしぎ」公式図録
◎富山県美術館ミュージアムショップにて販売中。
2023/02/01(水)(artscape編集部)