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カタログ&ブックス | 2022年4月1日号[テーマ:Chim↑Pomが「時代に呼応」し続けてきた記録としての5冊]

2022年04月01日号

注目の展覧会を訪れる前後にぜひ読みたい、鑑賞体験をより掘り下げ、新たな角度からの示唆を与えてくれる関連書籍やカタログを、artscape編集部が紹介します。
震災、都市、原発などさまざまな社会問題に呼応しては介入を試みるアーティストコレクティブ・Chim↑Pomの過去最大規模の回顧展「ハッピースプリング」(森美術館にて2022年2-5月開催)。2005年から活動を続ける彼らの問題意識と、発想を定着させる瞬発力・行動力にひたすら圧倒される本展。その秘密に迫る5冊を選びました。


今月のテーマ:
Chim↑Pomが「時代に呼応」し続けてきた記録としての5冊

※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:森美術館


1冊目:We Don't Know God: Chim↑Pom 2005–2019

著者:Chim↑Pom
発行:ユナイテッドヴァガボンズ
発売日:2019年6月4日
サイズ:292ページ

Point

それまでのChim↑Pom作品を一挙にまとめた、2019年の刊行時点での決定版的作品集。その後に続くコロナ禍や東京五輪の開催など、この数年間の社会の激動ぶりと、それに呼応して新たな作品を続々と発表しているChim↑Pomの活動の旺盛さに目が回るような思い。会田誠、椹木野衣などによる論考も豊富に掲載。


2冊目:都市は人なり SukurappuandoBirudoプロジェクト全記録

著者:Chim↑Pom
発行:LIXIL出版
発売日:2017年8月18日
サイズ:20×23cm、227ページ

Point

五輪の開催が2013年に決定して以降、都市開発の名の下に急速な変貌を遂げてきた東京。本書は、取り壊しを控えた歌舞伎町のビルでの展覧会「また明日も観てくれるかな?」を中心としたプロジェクトの克明な記録集。初期より路上からの視点を一貫して持ち続けてきたChim↑Pomの《ビルバーガー》はやはり圧巻。


3冊目:はい、こんにちは ─Chim↑Pomエリイの生活と意見─

著者:エリイ
発行:新潮社
発売日:2022年1月31日
サイズ:20cm、174ページ

Point

「ハッピースプリング」展の後半に彼女に焦点を当てたパートがあることからもわかる通り、Chim↑Pomのパフォーマンスに不可欠なのがエリイの存在。そんな彼女が人工授精からの出産を経て上梓したドキュメント。いわゆる出産エッセイとは一線を画する、エッセイと小説の中間のような独自の文体が脳裏に焼き付くよう。



4冊目:公の時代──官民による巨大プロジェクトが相次ぎ、炎上やポリコレが広がる新時代。社会にアートが拡大するにつれ埋没してゆく「アーティスト」と、その先に消えゆく「個」の居場所を、二人の美術家がラディカルに語り合う。

著者:卯城竜太、松田修
発行:朝日出版社
発売日:2019年9月30日
サイズ:19cm、322ページ

Point

Chim↑Pomのメンバー卯城竜太と美術家の松田修による二人の対話で淡々と綴られていくのは、地域芸術祭などを通して公共に「配置」される存在となりかけているアーティストや、現代日本における個人の感覚の変化に対する問題。近年頻繁に起こる、表現活動と炎上の関係性などを考えたい人にも勧めたい一冊です。



5冊目:乙女の絵画案内 「かわいい」を見つけると名画がもっとわかる(PHP新書)

著者:和田彩花
発行:PHP研究所
発売日:2014年6月20日

Point

大学院でも美術史を専攻した和田彩花(元アンジュルム)が古今東西の名画の見どころを綴った、アート鑑賞入門としても読みやすく自由な視点がもらえる一冊。彼女が現代美術の面白さに開眼したのは、3.11に関連したChim↑Pomの展示「Don’t Follow The Wind」(2015)がきっかけだそう。







Chim↑Pom展:ハッピースプリング

会期:2022年2月18日(金)~5月29日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/index.html


「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」展覧会図録

出版社:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、美術出版社書籍編集部
発行:森美術館
発行日:2022年3月31日
サイズ:37.5×37.5cm、48ページ+大型ポスター
言語:日英バイリンガル

展覧会カタログ + 大型ポスター + LPレコード
本展を企画した森美術館キュレーター(近藤健一)による論考や、セクション解説、作品解説、作品図版、作家によるイラストなどを掲載。LPレコードには、展覧会会場用オーディオガイド音声の抜粋とアーティスト涌井智仁によるリミックスを収録。
※LPレコードの音源はパソコンのみでダウンロードできます(期間限定回数制限あり)。詳細は商品に同封される説明書をご確認ください。


◎展示会場、森美術館オンラインショップで販売中。


2022/04/01(金)(artscape編集部)

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