artscapeレビュー
SYNKのレビュー/プレビュー
プレビュー:スイス・デザインの150年
会期:2015/01/17~2015/03/29
東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]
日本とスイスの国交樹立150年を記念して開催される展覧会。観光・交通といった地理的な要素をブランド化するデザインから、ビクトリノックスやネフ、スウォッチなどのものづくり企業のデザイン、デザインの巨匠マックス・ビル、スイス・タイポグラフィ、建築家ル・コルビュジエ、そしてスイスデザインの現在まで、その全貌を見せるという。スタイルとしては実用性と機能性、合理性というモダンデザインを好みつつ、ブランドの創出においては職人仕事、手仕事を重んじ、高い価値と優れたイメージを生み出しているスイスデザイン。その歴史と現在の姿は、日本のデザインのあり方にも大いに参考になるに違いない。[新川徳彦]
2015/01/05(月)(SYNK)
トッド・マクレラン「THINGS COME APART」
会期:2014/11/22~2015/01/04
Paul Smith SPACE GALLERY[東京都]
カナダ・トロントをベースに活躍するフォトグラファー、トッド・マクレラン(Todd McLellan)の仕事から「Disassembly Series(分解シリーズ)」と呼ばれる写真作品が紹介されている。黒電話、タイプライター、カメラ、PC、時計等々、道端に捨てられていたガジェットを拾ってきてばらばらに分解し、白い背景の上にならべて撮影した写真シリーズ。言葉にしてしまうと至極簡単なのだが、露わにされたガジェットの機構の面白さと、それぞれがきちんと機能を持った部品によるコンポジションの美しさには驚かされる。これは当然かも知れないが、アナログで可動部が多い機械ほど構造は複雑で部品数が多い。タイプライターやアコーディオンの写真には膨大な数の部品が並んでいる。対して、DVDプレーヤはとても単純に見える。PCの構造は単純に思われるが、キーボードのキーなど意外に部品の数が多い。部品を並べて撮影した写真ばかりではなくそれらが宙を舞っている写真があるが、マクレランのウェブサイトを見ると実際に部品を落下させてストロボ撮影しているようだ。展覧会を企画したポール・スミスとは3種類の腕時計でコラボレーションしている。メカ好きにはたまらない作品。[新川徳彦]
Disassembly behind the scenes from Todd McLellan Motion/Stills Inc. on Vimeo.
2015/01/03(土)(SYNK)
日本の色、四季の彩──染色家 吉岡幸雄展
会期:2015/01/02~2015/01/18
美術館「えき」KYOTO[京都府]
京都、染司よしおか五代目、吉岡幸雄の仕事を紹介する展覧会。かつて国風文化を彩った240種のかさね色目による屏風、奈良東大寺や石清水八幡宮の年中行事で献じられる和紙製の造り花、薬師寺など古社寺の伝統行事で着用される伎楽衣装など、いずれも布や紙に色を染めた作品が出品されている。これまでにも、さまざまなメディアでたびたび紹介されてきた吉岡氏。作務衣の似合うその風貌はまさしく職人風で、一見して頑健で質実といった印象をうける。その仕事は、しかし、色の呪術のようである。たとえば、正倉院に残された染色の復元。たしかに遺物には色が残ってはいるものの、永い歳月を経て変色、退色してもとの色は定かではない。染料や染め方に関する記録がいくらかあったとしても、染色は気温や湿度、水質など微妙な条件の違いに結果が左右される繊細な作業なので、記録どおりとはいかないだろう。いまとなっては、当時の色そのものはただ推し測ることしかできない。それでも吉岡氏は日本の染色の歴史を丹念にたどり、経験を重ねるなかで製法を確立してきた。本人は自身の仕事を「日本において古くから伝わってきた植物染、つまり自然に存在する草木花の中から美しい色彩を引き出して絹や麻、木綿、和紙などに染めること」と述べている。かつて日本人が愛でた色、その色をいま、わたしたちの目前に彩って顕現させてくれる、その仕事はまるで超自然にはたらきかける呪術のようである。[平光睦子]
2015/01/03(土)(SYNK)
PAGE ONE 西田光男の鍛鉄仕事
会期:2014/09/11~2014/09/23
あるぴいの銀花ギャラリー[埼玉県]
鍛鉄工芸家・西田光男と、その工房PAGE ONEの作品展。埼玉県秩父市に工房を構える西田光男は、小さな箱物から実用的な門扉やフェンス、さらにはオブジェやモニュメントまでを手がける鍛鉄(ロートアイアン)の作家。棒状あるいは板状の鉄を熱し、叩き、伸ばし、曲げて形をつくってゆく。ムーミンの物語世界をモチーフにした「あけぼの子どもの森公園」(埼玉県飯能市)の建物の窓枠やフェンス、橋やベンチ、オブジェなどの鉄仕事はそれと知らずに知っている人も多いのではないだろうか。最近の仕事としては、京王線吉祥寺駅上にオープンした「キラリナ吉祥寺」の5階女子トイレに鳥籠をモチーフにした化粧ブースなどを設置したという(女性でなければ見ることができないのが残念!)。展示はオブジェや箱などの小物を中心に、ベンチ、門扉のサンプル、屋外には大きな恐竜の親子がいる。この恐竜は東日本大震災の翌年、トラックに乗せて被災地の保育園や幼稚園、学校をめぐり、子どもたちを楽しませてきたものだという。作品を貫く特徴はユーモア(駄洒落好きでもあるらしい)。実用的な門扉やフェンスはエレガントな造形であるばかりではなく、添えられた小さな動物たちなどが楽しく見ていて飽きることがない。クライアントの要望を聞いてスケッチをつくり、一つひとつを手作りする。鋳物と違って型を用いないので、似たモチーフはあっても同じものはひとつとしてない。仕事に合わせてハンマーや木型を自作。工房にはそうした自作の道具がずらっと並んでいるのだという。住宅や店舗の仕事を数多く手掛けていて、筆者の住む街にも設置された作品があると聞いた。街を歩くときに気を付けて観察してみよう。[新川徳彦]
2014/9/2(火)(SYNK)
ミュシャ・スタイル
会期:2014/07/12~2014/11/09
堺市立文化館 アルフォンス・ミュシャ館[大阪府]
パリのアール・ヌーボーの代名詞ともなった「ミュシャ・スタイル」であるが、アルフォンス・ミュシャがポスター画家としてそのスタイルを生み出し活躍したのは、サラ・ベルナールのポスター《ジスモンダ》(1894)から最初に渡米する1904年頃までのわずか10年間のことにすぎない。ミュシャがどのようにしてそのスタイルを生み出したのかはいまだに謎であるが、それ以降多くの追随者、模倣者を生み、いまだにその人気は衰えることがない。ではミュシャ・スタイルとはなんなのか。スタイルの構成要素には裾の長い布をまとった神秘的な女性や、植物、淡い色彩、曲線、装飾文様の多用があげられる。一見するとそれは様式化されたパターンの繰り返しに見えるが、実際には一つひとつの作品で異なる様相が見られ、ミュシャが作品のテーマごとに入念にモチーフを選択していたことが解説されている。また、ミュシャ・スタイルの前後の時代に描かれた作品と比較することで、表現の特徴と差異を提示している。[新川徳彦]
2014/8/20(水)(SYNK)