2021年04月15日号
次回5月17日更新予定

artscapeレビュー

日本の色、四季の彩──染色家 吉岡幸雄展

2015年01月15日号

会期:2015/01/02~2015/01/18

美術館「えき」KYOTO[京都府]

京都、染司よしおか五代目、吉岡幸雄の仕事を紹介する展覧会。かつて国風文化を彩った240種のかさね色目による屏風、奈良東大寺や石清水八幡宮の年中行事で献じられる和紙製の造り花、薬師寺など古社寺の伝統行事で着用される伎楽衣装など、いずれも布や紙に色を染めた作品が出品されている。これまでにも、さまざまなメディアでたびたび紹介されてきた吉岡氏。作務衣の似合うその風貌はまさしく職人風で、一見して頑健で質実といった印象をうける。その仕事は、しかし、色の呪術のようである。たとえば、正倉院に残された染色の復元。たしかに遺物には色が残ってはいるものの、永い歳月を経て変色、退色してもとの色は定かではない。染料や染め方に関する記録がいくらかあったとしても、染色は気温や湿度、水質など微妙な条件の違いに結果が左右される繊細な作業なので、記録どおりとはいかないだろう。いまとなっては、当時の色そのものはただ推し測ることしかできない。それでも吉岡氏は日本の染色の歴史を丹念にたどり、経験を重ねるなかで製法を確立してきた。本人は自身の仕事を「日本において古くから伝わってきた植物染、つまり自然に存在する草木花の中から美しい色彩を引き出して絹や麻、木綿、和紙などに染めること」と述べている。かつて日本人が愛でた色、その色をいま、わたしたちの目前に彩って顕現させてくれる、その仕事はまるで超自然にはたらきかける呪術のようである。[平光睦子]

2015/01/03(土)(SYNK)

2015年01月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ