artscapeレビュー
PAGE ONE 西田光男の鍛鉄仕事
2014年10月01日号
会期:2014/09/11~2014/09/23
あるぴいの銀花ギャラリー[埼玉県]
鍛鉄工芸家・西田光男と、その工房PAGE ONEの作品展。埼玉県秩父市に工房を構える西田光男は、小さな箱物から実用的な門扉やフェンス、さらにはオブジェやモニュメントまでを手がける鍛鉄(ロートアイアン)の作家。棒状あるいは板状の鉄を熱し、叩き、伸ばし、曲げて形をつくってゆく。ムーミンの物語世界をモチーフにした「あけぼの子どもの森公園」(埼玉県飯能市)の建物の窓枠やフェンス、橋やベンチ、オブジェなどの鉄仕事はそれと知らずに知っている人も多いのではないだろうか。最近の仕事としては、京王線吉祥寺駅上にオープンした「キラリナ吉祥寺」の5階女子トイレに鳥籠をモチーフにした化粧ブースなどを設置したという(女性でなければ見ることができないのが残念!)。展示はオブジェや箱などの小物を中心に、ベンチ、門扉のサンプル、屋外には大きな恐竜の親子がいる。この恐竜は東日本大震災の翌年、トラックに乗せて被災地の保育園や幼稚園、学校をめぐり、子どもたちを楽しませてきたものだという。作品を貫く特徴はユーモア(駄洒落好きでもあるらしい)。実用的な門扉やフェンスはエレガントな造形であるばかりではなく、添えられた小さな動物たちなどが楽しく見ていて飽きることがない。クライアントの要望を聞いてスケッチをつくり、一つひとつを手作りする。鋳物と違って型を用いないので、似たモチーフはあっても同じものはひとつとしてない。仕事に合わせてハンマーや木型を自作。工房にはそうした自作の道具がずらっと並んでいるのだという。住宅や店舗の仕事を数多く手掛けていて、筆者の住む街にも設置された作品があると聞いた。街を歩くときに気を付けて観察してみよう。[新川徳彦]
2014/9/2(火)(SYNK)