artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ポール・デルヴォー展  夢をめぐる旅

会期:2013/01/22~2013/03/24

埼玉県立近代美術館 2F[埼玉県]

埼玉県立近代美術館のポール・デルヴォー展「夢をめぐる旅」を鑑賞した。展示では、女性、建築、鉄道、小物などのキーワードを掲げながら、彼の絵画に頻出する主要なモチーフを読み解く。やはり、絵はちょっと硬い。それにしても、彼は生涯飽きることなく、シュルレアリスム的な雰囲気で、古典主義の建築を背景とした裸の女性の絵を描いてきたわけだが、会場では、彼がまだ「デルヴォー」になっていない初期の作品と、視力をほとんど失った晩年の「デルヴォー」的ではない作品も見ることができたのが興味深い。

2013/02/28(木)(五十嵐太郎)

トム・サックス展「ストア」

会期:2013/02/20~2013/03/04

8/アートギャラリー/小山登美夫ギャラリー[東京都]

ギャラリーの中央にデーンと屋台というかキャビネットみたいなものが置かれ、そこに本やらオブジェやらが並んでいる。底にはキャスターもついていて、いかにも素人が手づくりしましたっていうチープな感じだ。そこに並んでいるのは、自分のカタログや自作を印刷したトランプや宇宙空間でも遊べる磁石付のチェスといったエディションもの。これは自作のミニチュアを収納したデュシャンの「トランク」からの発想だろうが、このように屋台でアートを見せる(売る)という商売はありかも。

2013/02/27(水)(村田真)

損保ジャパン美術賞展 FACE2013

会期:2013/02/23~2013/03/31

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募したところ、10代から90代まで1,275人の応募があったという。うち受賞作品9点を含む69点を展示している。ちなみにタイトルの「FACE」とは「Frontier Artists Contest Exhibition」の略称だそうだ。ザーッと見て、平面ならなんでもあるなと思った。油絵(+アクリル)から、日本画、版画、コラージュ、CGプリントまで、具象画も抽象画も、いまどきのチャラい絵も団体展系のシブい絵もなんでもあり。これらの価値基準はひとつじゃないはずのにどうやって審査し、優劣をつけたんだろう? きっと審査員のみなさんは神さまみたいな人たちなんだろうなあ。最初の部屋に9点の受賞作品が並ぶ。グランプリの堤康将はじめ、優秀賞の永原トミヒロ、近藤オリガ、田中千智、読売新聞社賞の高木彩らだが、続く非受賞者の作品とそう大差ないように思えた。むしろ俵萌子や室井公美子ら力のある抽象が受賞してないのが不思議なくらいだ。

2013/02/27(水)(村田真)

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新井淳一の布 伝統と創生

会期:2013/01/12~2013/03/24

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

東京オペラシティアートギャラリーの「新井淳一の布 伝統と創生」展へ。テキスタイルのデザインによって、被膜、伝統、素材と技術などのテーマを具体的に示す好企画である。理論と実践の対応を提示する1/1の実物をずらりと配置したり、テキスタイルによる空間のインスタレーションは、建築的にも面白い。それを空間化した会場の構成は、建築家の田根剛である。同時開催のproject Nでは、阿部未奈子の記憶と解体を伴う風景画も興味深い。

2013/02/27(水)(五十嵐太郎)

三人展「片想い」

会期:2014/02/19~2014/03/02

Black bird white bird[京都府]

同ギャラリーで「男の子バージョン」の展示を見て、そこから徒歩のprinzでの「女の子バージョン」へ。尾花大輔の細かい書き込みの多いドローイングや文字等の集合体のグラフィック、相反して白澤真生のデフォルメしたフレームの女性など、受賞歴も多い若手気鋭のデザイナーのぎこちなさにまで感じる“手触り”があったのは面白かった。そして、ギャラリーとギャラリーのあいだを歩いた10分ぐらいは「片想い」をより感じる時間と距離具合だったのも、どこか企画意図として組み込まれていたように思えて楽しかった。

2013/02/27(木)(松永大地)