artscapeレビュー
チョイ・カファイ「ノーション:ダンス・フィクション」
2011年12月15日号
会期:2011/11/07~2011/11/08
シアターグリーン[東京都]
筋肉組織に電気信号を与えると伸縮することは以前から知られていたが、その筋肉の動きをデータ化し、ニジンスキーやピナ・バウシュら過去のダンス映像に合わせてダンサーの動きをコントロールしようという試み。実際、腕や脚にコードをつけたダンサーは、横に映される巨匠のダンス映像と同じ動きをしてみせる。ダンス公演というより、実験の成果を発表する生体科学のデモンストレーションに近い。だが、はたしてどこまでが電気刺激による動きなのか、疑問が残る。途中でコンピュータがトラブり、同じ動きを繰り返したところもわざとらしい。笑いをとるためのヤラセか? ひょっとしたら初めから電気など流れておらず、まったくのフィクションかもしれない(タイトルも「ダンス・フィクション」だし)。おそらく電気が流れているのは事実だろう。だが、コードをつなげば素人でも土方巽と同じ動きができるわけではなく、何度も練習したダンサーだからこそ映像と同じ動きができたのだ。ならば電気を流さずとも練習すれば同じ動きができるはずだし、そもそも過去のダンサーと同じ動きをしても単なる模倣にすぎないだろう。これはそれを先端科学技術を駆使してあえてやってしまうバカバカしさに最大の意義があるだろうし、その愚行自体がダンスなのだ。
2011/11/07(月)(村田真)