artscapeレビュー
Identity VII「ゆっくり急げ Festina Lente」
2011年08月15日号
会期:2011/06/24~2011/07/23
nca[東京都]
地下に降りる階段の上に黄色いシューズが1足、ポツンと置いてある。道行く人々にとっては落としものだが、地下に現代美術のギャラリーがあることを知ればこれが作品だろうと予測できる。価格は2万円。道行く人が知らずに持って行ったら窃盗になるだろうか。地下に降りると、エントランスのガラスには何人かの口紅がべったりとついている。これにも値段がついてるが、世話好きのコが気を利かせて消してしまったら賠償請求されるだろうか。ギャラリーに入るとまず、大相撲の八百長に関与したとして引退勧告を受けたものの、引退届を出さず解雇された内モンゴル自治区出身の蒼国来を救うためのキャンペーンが目に入る。心の準備ができていなければつい本気で読んでしまうところだが、幸いここまでふたつの作品を突破して来たのでだまされないぞ。しかし、これがもし作品に名を借りた本気のキャンペーンだとしたら? ま、このように疑心暗鬼にもかられる楽しい展覧会でした。
2011/07/13(水)(村田真)