artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:福村真美 展

会期:2011/06/21~2011/07/03

ギャラリーモーニング[京都府]

昨年の個展では、夏の木漏れ日や冬の曇り空、プールなどを描いた作品を発表。福村の描く光景とその色彩は、空気の温度や風の感触など、身体的な記憶をじわじわと刺激する。昨年末、同ギャラリーでのグループ展で発表された夜の風景を描いた小作品には脳裏にほのめく記憶のイメージや物語を想起させる儚い魅力があった。新作が並ぶ日が楽しみだ。

2011/06/15(水)(酒井千穂)

「プラド美術館所蔵:ゴヤ──光と影」記者発表

会期:2011/06/14

スペイン大使館[東京都]

ゴヤといえば40年前、ぼくが高校生のときに国立西洋美術館で「ゴヤ展」を見たなあ。このときは《裸のマハ》と《着衣のマハ》が対で出品されたり、晩年の壁画「黒い絵」がパネル展示されたりして話題を呼んだ。もうひとつ覚えているのは、当時500~600円が一般的だったカタログがこのとき800円もして驚いたこと。以来カタログは分厚く高価になる一方だ(といっても一般書籍に比べれば割安だが)。で、40年ぶりの「ゴヤ展」はやはり国立西洋美術館で開催されるが、残念ながらマハは着衣だけで裸のほうは来られないそうだ。裸も見たいよお。でも、ゴヤ特有の暗さを放つ肖像画が何点か来るし、晩年の自画像も見られるので楽しみ。ところで、西洋美術館の青柳正規館長はあいさつで、タイトルの「光と影」を「光と闇」に間違えていた。館長、「光と闇」はつい先日まで西洋美術館でやっていた「レンブラント展」のキャッチコピーですよ。かくも西洋絵画には「光と闇」の表現が多いというか、日本人は西洋絵画に「光と闇」を見出したというか。はからずも東西の絵画表現の根本的な違いにまで思いを馳せてしまうのだった。

2011/06/14(火)(村田真)

「驚くべき学びの世界」展

会期:2011/04/23~2011/07/31

ワタリウム美術館[東京都]

デザインの視点から見たとき、北イタリアの小さな町において、なんという自由で創造性のある教育が行なわれているのかと感心させられる。これを経験した子どもはどんな大人になるのだろうか。ぐるぐると大きなリボンを巻いたような、平田晃久の会場デザインは実に彼らしい空間になっている。鑑賞者は、立体的に展開する一筆書きの面を追いかけ、ときにはそれが生みだす内部に入り、空間を体験していく。低コストでも充分に展示の場をつくるデザインだ。地下では、平田による建築模型展も同時開催されていた。

2011/06/14(火)(五十嵐太郎)

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中島奈津子 展

会期:2011/06/03~2011/06/19

アートゾーン神楽岡[京都府]

女性、鳥、蝶、花、パンプスなどをモチーフに、パステルトーンで彩られたフェミニンな風合いの作品。それらは決して私好みではないが、木版凹版の繊細な線描には大いに感心させられた。技法自体は知っていたが、実物を見たのは初めてかもしれない。まさかこんなに柔らかな線が木版画で表現できるとは。木版画イコールざっくりした素朴な線と思い込んでいたので、軽いショックを受けた。

2011/06/14(火)(小吹隆文)

SOURA-SAISAI 西村みはる・前川奈緒美

会期:2011/06/13~2011/06/18

Oギャラリーeyes[大阪府]

珍しい展覧会タイトルは、自分がこれまでに培ってきた感覚を信じて、画面上で自身の価値観を徹底的に探し求めることから名付けられたという(漢字では「捜羅再再」と表記する)。西村と前川は、共に描く行為のなかから空間をつくり上げていくタイプの画家だ。どちらの作品からもピンと張りつめた気迫が感じられ、響き合う緊張感に身が引き締まる思いがした。必然性のある2人展であった。

2011/06/13(月)(小吹隆文)