artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
鷹取雅一 展
会期:2011/01/15~2011/02/19
児玉画廊[京都府]
昨年の「アートフェア京都」では児玉画廊から参加し、およそアートフェア向きとは思えない廃墟のようなインスタレーションを行なった鷹取。本展でもその持ち味は十分に発揮された。主たる作品は絵画ながら、画材、展示法などの面で絵画のお約束に徹頭徹尾反旗を翻したような展示が行なわれたのだ。実は本展は、昨年11月に倉敷市立美術館で行なわれたグループ展での展示をアレンジしたもの。これでも倉敷の時に比べたら遙かに整理されているのだとか。今後鷹取は、これまでのようなハチャメチャな展示から遠ざかろうとしているのかも。いずれにせよ、今の彼が放つ破壊的なパワーは失ってほしくない。
2011/01/15(土)(小吹隆文)
中川トラヲ「ポストスクリプト」
会期:2011/01/15~2011/02/19
児玉画廊[京都府]
具象表現に端を発しながらも、描いた線や色彩に触発された上書きが何度も重なることで、具象とも抽象ともつかない画境に至る中川の作品。前回の個展では展示室の中央に立体を1点置くことで借景的効果を狙ったが、本展では支持体を薄いベニヤ板やガラスにすることで、イメージをより鮮明に抽出することが図られた。また、ビデオ映像をある方法で一時停止することで得られるストライプの画像をプリントした平面作品4点も出品。この種の作品は今まで見たことがないので、今後の展開を考えるうえで重要なポイントとなるかもしれない。
2011/01/15(土)(小吹隆文)
OOOO! OH,HOT!?OOOO BL Anthology
会期:2011/01/13~2011/01/18
Hidari Zingaro[東京都]
京都を拠点とする4人のイケメン・アートオーガナイザーOOOO(オーフォー)が企画した「OOOOフェスト」、その第4弾は、美術系腐女子の幕野まえりがOOOOたちのプライベートな共同生活を描いた同人誌マンガを展示。いわゆる「やおい」ってやつでしょうか、メンバーの「恋模様」を赤裸々に暴いた「妄想マンガ」で笑えるのだが、原画とともに展示されているキャンバス画はもっと笑える。肉づけとか陰影といった絵画の基本以前の少女イラストだが、年末に見た「オイルショック!」同様、新鮮といえば新鮮といえないこともない。100号ほどありそうな大作が12万8000円と破格のお値段。しかしこんなのが売れたらどうしよう。
2011/01/14(金)(村田真)
池田学 展「焦点」
会期:2010/12/08~2011/01/15
ミヅマアートギャラリー[東京都]
今回は大作の1点勝負ではなく、22×27センチという同サイズの小品20点を出している。しんしんと降り積もる雪の一粒一粒がドクロになっていたり、うねる高波の波頭が険しい山脈に変わっていたり、巨大なヘビが電車を飲み込んでいたり、どれもミクロとマクロ、自然と人工、生と死といった対立するイメージが複合された見事な細密画。大作の場合どの部分を拡大してもピントが合ってるという驚きがあったが、これはその驚きと楽しみを20に分割した感じだろうか。タイトルの「焦点」にはそんな意味もこめられているのだろう。しかしコストパフォーマンスを考えれば、大作1点つくって売れ残るより、小品をたくさんつくって少しでも売ったほうが安全という計算も働いているのではないか、とも思ったが、いや失礼、人気作家の池田学にはそんな心配は無用だった。今回は1点50万円(+税)で、すでに完売しているのだ。ワオ!
2011/01/14(金)(村田真)
ホキ美術館開館記念特別展
会期:2010/11/03~2011/05/22
ホキ美術館(設計:日建設計)[千葉県]
ユニークな絵画コレクションをもつホキ美術館は、東京から決して近い距離ではないが、多くの来場者を集めていた。小さなビルバオ・グッゲンハイム美術館というべき、インパクトのある張り出した展示室と彫刻的な造形は、住宅街の横にあって目立っていた。このかたちは、まわりのカーブする道路も抱え込むように、くねるチューブの集合体としてヴォリュームを構成しており、コンテクスチュアリズム的な操作から導かれたものだ。外観だけではない。室内では、天井の銀河のように見えるLEDの小さな照明群、マグネットによる絵画の設置、音声ガイドのシステム、ガラスの袖壁で仕切られた真黒のコンペ・ルームなど、展示デザインにも新しい工夫が散見される。
ところで、ホキは、日本初の写実専門絵画の美術館というだけあって、いかにこうした作品が、いわゆる「現代アート」から疎外されているかが、改めてよくわかる内容だった。やはり、現代アートとの客層も違う。作品の抽象的なコンセプトではなく、誰にでも驚くことができる写実の技巧と、共感しやすい描かれたモチーフへの物語的な想像可能性によって、一般の観客を魅了している。また個別に見ていくと、森本草介や中山忠彦など、それぞれに異なる画風や世代の違いなども楽しむことができた。
2011/01/14(金)(五十嵐太郎)