artscapeレビュー

周育正:レジデンシー・グッズ

2010年05月15日号

会期:2010/04/17~2010/04/25

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

横浜市と台北市によるアーティスト交流プログラムで、3カ月間BankARTに滞在していた周さんの発表。作品は映像で、「わたしはTAV(Taipei Artist Village)の補助する10万台湾ドル、日本円で285,000円をもって横浜にきた」とか、「池田さんから暖かいお招きをいただき、とてもおいしい日本料理屋でご馳走になった」とか、「わたしもこの交流プログラムが未来に向けて発展する可能性と、その資金の出所について考えている」とか、英文が流れるばかり(卓上のパソコンの画面では日中両国語が見られる)で、画像が出てこない。いつ「本編」が始まるのかと思ったら文章だけで終わってしまった。その両脇には、「アーティスト」「アート・インスティテューション」「カルチュラル・デパートメント」の3者の関係がグラフで示されている。どうやら周さんは、レジデンスに招かれたこと自体を自己言及的に作品化しようとしたらしいのだが、そのわりにレジデンシープログラムの経済的仕組みに肉迫するわけでもないし、その政治的背景を暴露しようというつもりもないらしい。どこにも着地できない中途半端さが残る。それがねらいか? まさかね。

2010/04/17(土)(村田真)

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