artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
柴田敏雄「a View」/「For Grey」

- a View
- 会期:2009年10月30日~11月29日
BLD GALLERY[東京都] - For Grey
- 会期:10月30日~11月25日
ツァイト・フォト・サロン[東京都]
同時期に開催された柴田敏雄の二つの個展。BLD GALLERYの「a View」は1993~2007年に撮影されたモノクロームの未発表風景作品を、ツァイト・フォト・サロンの「For Grey」では、近作のカラー作品を展示している。「a View」は日本各地のインフラストラクチャー建造物をきっちりと細部までシャープに押さえた手慣れた(見慣れた)作画であり、正直それほど新味はない。ただ、全体に水の流れの質感をとらえた作品が多く、抽象化となまなましい物質感が共存して、ダイナミックな効果をあげている。
「For Grey」はかなり面白かった。カラー写真への「転向」は、柴田の写真に新たな視覚言語を付け加えたのではないだろうか。モノクロームの冷ややかな物質性は、より官能的な色相のパッチワークに置き換えられ、見る者を柔らかに包み込むのびやかな雰囲気が生じている。普通なら、年齢を重ねていくごとに研ぎ澄まされ、洗練された枯淡の境地に向かうはずなのに、柴田がまったく逆の方向に進みつつあるのが興味深い。そのみずみずしい表現力によって、日本の風景をまったく思いがけない角度から見直すことができるようになったのが、実に目出たい。カラーなのに「For Grey」(灰色のために)というタイトルにも、余裕のあるユーモアを感じる。なおAkio Nagasawa Publishingから同名の2冊の写真集も刊行されている。
2009/11/14(土)(飯沢耕太郎)
普後均「On the circle」

会期:2009/11/04~2009/11/17
銀座ニコンサロン[東京都]
普後均は1980年代からの長いキャリアと、高度な技術を持つ写真家で、これまでも安定した水準にある作品をコンスタントに発表してきた。今回の「On the circle」もなかなか見応えがある。だがそれだけではない。正統派のイメージを打ち破る、ひねりを利かせた快作でもある。
タイトルが示すようにテーマは「円」(サークル)。雑草が生えている庭のような場所に、コンクリートのようなもので固められた丸い空間がしつらえてある。その「円の上で」いろいろな出来事が起こる様子を、写真家はやや上方から写しとっている。風船に囲まれた青年、バレリーナと中年の男女、中華鍋で顔を隠した花嫁、舟の上の老婆──さらに「円」の周囲では四季が巡って、草は枯れたり茂ったりし、雨や雪が降り、不意に炎が燃え上がったりする。つまりこの「円」は世界そのものの寓意であり、そこでは写真家が呼び寄せた人物たちによる、さまざまな出来事が起こっては消えていくのだ。
このような演劇的な手法は、ともすれば底の浅いものになりがちだが、あえて淡々と撮影することで、静かな、抑制された雰囲気を作り出したことが逆に成功している。普後の師匠である細江英公なら、もっとドラマチックな演出を試みそうだが、そのあたりに写真家のスタイルが滲み出てくるということだろう。そういえば、普後の代表作である『FLYING FRYINGPAN』(写像工房、1997年)も、フライパンの丸い形にこだわったシリーズだった。「円」は彼にとって、魔術的な意味合いを持つイメージの生成装置なのだろうか。
2009/11/14(土)(飯沢耕太郎)
北九州国際ビエンナーレ2009 「移民」

会期:2009/10/10~2009/11/15
旧JR九州本社ビルほか[福岡県]
福岡県北九州市の門司港で開催された国際展。会場は1回目の2007年と同じ旧JR九州本社ビルで、参加アーティストも、シンガポールのチャールズ・リム以外、前回と同じ面々でそろえられた5組。ただ前回と大きく異なっているのは、出品作品が映像だけで占められており、しかもその形式もほとんど同じだったこと。都市の街並みやそこで労働する人びとを収めた静止画像をわずかに動かしながらゆっくりとクローズアップする映像を、いっさいの音声もなく、ただ延々とループ状に反復させた。映像の形式が統一されているせいか、それぞれのアーティストの個性が打ち消され、集団的な制作活動なのではないかと思えるほど、その内容も同じように見えたが、これが独創的なアーティストという神話を打ち砕く野心的な試みであることはまちがいない。けれども、こうした挑戦的な手法が「移民」という今回のテーマに対応しているのかどうかは甚だ疑問である。画一的に均質化された映像が「世界標準」の名の下に世界の凹凸を平らにならしていく現在のグローバリズムのメタファーとして考えられなくもないが、ではそこからあふれ出し、逃げ出し、移動し続ける「移民」はいったいどこにいるのだろうか。その謎を問いかけたという意味では成功なのかもしれない。けれども、映像を見る快楽をこれほどまで否定する禁欲的な映像が、どこまで問いを問いとして持続させることができるのか、きわめて疑わしい。
2009/11/14(福住廉)
gallerism 2009

会期:2009/11/02~2009/11/14
大阪府立現代美術センター[大阪府]
大阪、京都などの12の画廊がそれぞれ推薦アーティストの作品を紹介。毎年開催されている展覧会だが、前年の出品作家の中から「次回も見たいアーティスト」として来場者と参加ギャラリーの投票で選出された作家のアンコール展示も同時に行なわれている。今回は牛島光太郎。先月、神戸ビエンナーレで見た展示と同様の作品がいくつか展示されていた。刺繍されたテキストと身近にある道具が紡ぐロマンティックな物語の作品はどれも魅力的でまたしてもその才能に脱帽。シリーズ小説の新刊が待ち遠しい思いそのままに次の活動が楽しみだ。
2009/11/13(金)(酒井千穂)
神戸ビエンナーレ2009
会期:2009/10/03~2009/11/23
メリケンパークほか[兵庫県]
そして、神戸ビエンナーレ。美術館近くの船着場からメイン会場のメリケンパークまで船で行ったのだが、その途中の防波堤に出色の作品が。突堤の上にコンクリートの板を斜めに置いた植松奎二の《傾くかたち》と、30年前のBARローズチューを再現した榎忠の《リバティ・アイランド》。メリケンパークには前回同様コンテナが70個近く並んでいるが、そのうちの約半分はいけばなや陶芸なので見ない。見るのはコンペで入賞した「アートインコンテナ国際展」だけ。作品は、暗くて密閉されたコンテナ空間の特性を生かして映像や光を使ったものが多いが、まあ9割は見るに値しない。大賞を受賞した戸島麻貴の《ビヨンド・ザ・シー》も映像だが、さすが見ごたえがある。床に白い砂を敷き、上から映像を流す趣向で、波打ち際の海岸や花畑などの映像が音とともに歯切れよく移り変わっていく。見ていて気分がいい。戸島、やったな。
2009/11/13(金)(村田真)


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