2021年09月15日号
次回10月1日更新予定

artscapeレビュー

柴田敏雄「a View」/「For Grey」

2009年12月15日号

a View
会期:2009年10月30日~11月29日
BLD GALLERY[東京都]
For Grey
会期:10月30日~11月25日
ツァイト・フォト・サロン[東京都]

同時期に開催された柴田敏雄の二つの個展。BLD GALLERYの「a View」は1993~2007年に撮影されたモノクロームの未発表風景作品を、ツァイト・フォト・サロンの「For Grey」では、近作のカラー作品を展示している。「a View」は日本各地のインフラストラクチャー建造物をきっちりと細部までシャープに押さえた手慣れた(見慣れた)作画であり、正直それほど新味はない。ただ、全体に水の流れの質感をとらえた作品が多く、抽象化となまなましい物質感が共存して、ダイナミックな効果をあげている。
「For Grey」はかなり面白かった。カラー写真への「転向」は、柴田の写真に新たな視覚言語を付け加えたのではないだろうか。モノクロームの冷ややかな物質性は、より官能的な色相のパッチワークに置き換えられ、見る者を柔らかに包み込むのびやかな雰囲気が生じている。普通なら、年齢を重ねていくごとに研ぎ澄まされ、洗練された枯淡の境地に向かうはずなのに、柴田がまったく逆の方向に進みつつあるのが興味深い。そのみずみずしい表現力によって、日本の風景をまったく思いがけない角度から見直すことができるようになったのが、実に目出たい。カラーなのに「For Grey」(灰色のために)というタイトルにも、余裕のあるユーモアを感じる。なおAkio Nagasawa Publishingから同名の2冊の写真集も刊行されている。

2009/11/14(土)(飯沢耕太郎)

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