artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

シェル美術賞展2009

会期:2009/11/11~2009/11/15

ヒルサイドフォーラム[東京都]

その本江氏が審査員長を務めるシェル美術賞展。なんかどれもこれも似たり寄ったりで飛び抜けた作品がないなあと思ったら、審査員も同様の感想だったらしく、審査は難航したらしい。結果、グランプリはなしで準グランプリに吉田晋之介の《樹海にて》が選ばれた。が、この作品も一見だれかとだれかの作品を足して2か3で割ったような印象は否めない。このような作品の均質化は、描く側に強力なモチベーションが欠けているからではないか。もし描くモチベーションがこうしたコンペに入選することだけにあるとすれば、シェルも日展化していくだろう。

2009/11/12(木)(村田真)

第41回日展

会期:2009/10/30~2009/12/06

国立新美術館[東京都]

こちらは出血大サービスの入場無料。さすが日展、皇室とのつながりが強いんでしょうか。かつて帝展だったし。今年の陳列点数は日本画・洋画・彫刻・工芸・書も合わせて3,098点。それにしても100年前から続くこのジャンル分けと序列、そろそろどうにかならんもんかね。作品そのものはあいかわらずだが、驚いたのはガイド本の「洋画」の巻頭に本江邦夫氏が文章を寄せていること。さすがに「絵画」についての一般論を述べるにとどまり、「洋画」にも「日展」にもまったく触れていないが、その絵画論が日展の洋画批判として深読みできる仕掛け。今度はぜひ展示を見ての感想を書いていただきたい。

2009/11/12(木)(村田真)

THEハプスブルク

会期:2009/09/25~2009/12/14

国立新美術館[東京都]

おそれおおくも本日は天皇陛下即位20年を記念して200円割引ってことで見に行く。それでも1,300円するからね。東博の「皇室の名宝」展は無料だって。タダでさえ混んでるのに、タダならもっと混むぞ。シャレです。「ベラスケスもデューラーもルーベンスも、わが家の宮廷画家でした」というコピーが物語るように、おそれおおくもハプスブルク家はメディチ家と並ぶヨーロッパ最大のパトロン。つまり「王室の名宝」展のはずなのに、この程度の作品しか来てないんじゃ誤解されかねない。ティツィアーノもルーベンスも収蔵庫から引っぱり出して来たみたいな在庫一掃セール的2流品だし、ルドルフ2世の好んだピーテル・ブリューゲル(父)は1点もないし。でもそのルドルフ2世を描いた肖像画をはじめ、デューラーの《若いヴェネツィア女性の肖像》、ベラスケスの《白衣の王女マルガリータ・テレサ》など見るべきものもあった。注目したいのは、ユディットやサロメなど首を斬る絵が何点か出ていたこと。昔の皇室じゃなかった王室は血がお好きだったようで。

2009/11/12(木)(村田真)

会田誠『いまさら北京』

発行所:大和プレス(発売=ユトレヒト)

発行日:2009年7月11日

会田誠が序文でこんなことを書いている。「私は芸術家として普段、何か『特別なもの』を作ろうとしている。特別に美しいもの、特別に醜いもの、特別に激しいもの、特別に穏やかなもの・・・等々」。ところが時々それが「悪い行為」に思えることがあるという。「この世のものはすべて特別だ、という意味で、この世に特別なものなんて一つもない」。にもかかわらず、さもそれらを「特別なもの」としてパッケージして提示する行為は、「悪しき詐術」ではないのかというのだ。
そこで会田が何をやったかというと、たまたまグループ展に参加するために一カ月ほど滞在した北京郊外の草場地付近の雑多な光景をカメラに収め、プリントしてこの一冊の写真集にまとめることだった。たしかに、ここに写っているなんとも散文的な都市とその近郊の眺めは「特別なもの」とはいいがたい。日本にはないローカルカラー(たとえば今はもう使われなくなった練炭の燃え滓、妙に派手なビニールシート等)を感じる場面もあるが、その大部分はごく見慣れたアジアの片隅の光景だからだ。
にもかかわらず、これらの糞も味噌も一緒になったようなごった煮状態の眺めが、奇妙な微光を発して目に食い込んでくるように感じるのはなぜだろうか。「特別なもの」を徹底して排除して作られているはずの写真集にもかかわらず、思わずページを繰る手を止めてじっと見入ってしまうような写真がたくさんある。これもまた会田誠の「悪しき詐術」の見事な作例なのか。なお、歌謡曲のような『いまさら北京』は日本語のタイトルで、英語のタイトルは『Beijing behind the ART』である。

2009/11/12(木)(飯沢耕太郎)

さかぎしよしおう展

会期:2009/11/03~2009/11/21

ギャラリエ アンドウ[東京都]

美術家・さかぎしよしおうの新作展。陶土を溶いた水をスポイトから垂らして手のひらサイズの造形物を創り出すことで知られているが、今回その超絶技巧は今までにない展開を見せた。球体と球体を直線状に積み上げるのではなく、球体と球体のはざまに球体を落とし、ちょうどレンガ状に積み上げる構造に変化したのだ。だからだろうか、造形物の表面はよりいっそう密度が増し、強固で堅牢な印象を強く醸し出していた。同じ技を駆使しながらも、ちがう作品として提示してくるところに、つねに新しさを見せ続けるアーティストとしての揺るぎない矜持を見た。

2009/11/12(福住廉)