artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
牧島如鳩 展─神と仏の場所─

会期:2009/07/25~2009/08/23
三鷹市美術ギャラリー[東京都]
異形の宗教画家・牧島如鳩(まきしま・にょきゅう、1892-1975)の本格的な回顧展。ハリトリス教会の伝教者であり、イコン画家として出発した牧島は、最終的に神と仏は同一であるという境地に達したといわれている。じっさい牧島の絵は油絵と水墨画を描き分け、しかも同じ画面に神と仏が共存する、文字どおり和洋混在の絵である。水墨画の筆遣いはそれほどでもないが、油絵の筆致は奇妙になまめかしく、それが本来見えないものを見えるように視覚化するアートのいかがわしさを存分に体現していたようだ。とくに圧巻なのが、いわき市の小名浜で大漁祈願のために描いたという《魚籃観音像》。観音様が小名浜の上空に来臨するというありえない様子が大胆に描かれ、しかもこれらのシリーズは発注元である小名浜漁業協同組合が所蔵しているという事実がこの上なくおもしろい。民衆とアートと信仰が三位一体となった牧島の絵は、西洋から輸入された「芸術」を私たちの暮らしの底辺で受け入れ、土俗化しながら発酵させ、時間をかけて熟成させた、文字どおり日本のリアルな絵である。
2009/08/02(日)(福住廉)
スタジオジブリ・レイアウト展

会期:2009/07/25~0009/10/12
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
昨年東京都現代美術館で開催され、大きな話題を集めた展覧会が、約1年の時を経て大阪でも開催。改めて実感したのは、その膨大なレイアウト(アニメの設計図となる原画のようなもの)の量。1本のアニメを作るのにどれだけ沢山の絵を描かねばならないことか。上手さ以上に量が天才の証であることを、現物をもって見せつけられた。会場は人、人、人で息もつけない盛況ぶり。なかなか前に進めないので、途中から最前列で見るのを放棄した。ジブリのブランド力はやっぱりすごい。観客の多くは作品を前にストーリーやキャラの魅力、そこから発展して思い出話に花を咲かせていたが、そういう展覧会だっけ? いや、だからこそアニメは強いのか。思い入れのない身には観客を観察する楽しみも残されていた。
2009/08/02(日)(小吹隆文)
「アトミックサンシャイン」沖縄展の検閲に抗議する美術展
会期:2009/07/20~2009/08/01
ギャラリーマキ[東京都]
インディペンデント・キュレイターの渡辺真也が企画した「アトミックサンシャイン」展の沖縄県立美術・博物館における巡回展で、出品作家である大浦信行の《遠近を抱えて》が同館の牧野浩隆館長の判断によって展示から外された事件にたいして、美術関係者が抗議のために開催した展覧会。《遠近を抱えて》のほか、事件に反応した美術家たちが作品を持ち寄り展示するとともに、会期中、識者たちによるトークイベントやシンポジウムが催された。《遠近を抱えて》は、かつて富山県立近代美術館によって同じように検閲され、いわゆる「天皇コラージュ裁判」に展開したが、時を経てまたもや同じ問題が繰り返されたわけだ。結局この20数年あまりのあいだ、日本の美術制度はまったく成熟していなかったのであり、今後もその見込みはきわめて薄いというほかない。その裁判の原告の一人だった美術評論家の針生一郎がこの日のトークで「私はもう長くはないから、あとはみなさん自分で考えてください」という旨の発言をしていたが、これは批評の放棄というより、じつにまっとうなメッセージである。これから貧しい時代を豊かに生きなければならない私たちにとって、切迫した問題なのは、貧しい時代を豊かにする「政治」より、豊かに生きる「想像力」だからだ。平たくいえば、功名心と自己保身、利権とイデオロギーでがんじがらめに束縛された「政治」に乗ったところで、お先真っ暗であることは眼に見えている。むしろ、いかにアホクサイ世の中であったとしても、その中でいかに楽しく生きることができるのか、それを想像的に考えることが私たちにとっての幸福をもたらすのではないだろうか。
2009/08/01(土)(福住廉)
KIM Yongsuk Keep?

会期:2009/07/05~2009/08/02
Party[福島県]
「Party」とは、おそらく日本でもっとも最寄り駅に近いオルタナティヴ・スペース。常磐線のいわき駅から徒歩3分。呑み屋が立ち並ぶ一角に立つ雑居ビルの中にあり、同じビルには映画館やバーが入居している。天井はそれほど高くはないが、床面積はかなりの広さで、図書コーナーやバーカウンターも併設しており、今後の活動が楽しみなスペースだ。今回催されたのは、地元福島で活動している金暎淑(キム・ヨンス)の個展。真っ白いゼロ戦とタンポポの綿毛をモチーフとした幻想的な映像作品などを発表した。強い風に吹き飛ばされる白い砂を映し出したスロー映像は、まるで原爆が炸裂するシーンのようでもあり、戦争と死を強く励起する作品である。
2009/07/31(金)(福住廉)
山本直彰 展

会期:2009/07/11~2009/09/06
平塚市美術館[神奈川県]
80年代以来、現代美術としての日本画を一貫して追求してきた山本直彰の回顧展。若かりし70年代に描かれた初期の作品からプラハ滞在を契機にはじめられた《Door》のシリーズ、そして最新作である《帰還》シリーズまで、ドローイングも含めて、あわせて60点あまりが発表された。《IKAROS》や《PIETA》といった題名からも想像されるように、山本の作品は神話的・宗教的なイメージにもとづいているものが多いように思われるが、画面に描き出されたイメージは、炸裂、瞬発、墜落、阻止などの言葉によってとらえられ、その点では、むしろサブカル的想像力と大きく重なっているようにも見えた。もちろんサブカル的想像力が神話的なイメージを流用しているのであって、決してその逆ではないのだが、しかし、村上隆の台頭より以前に、じつは日本画とサブカルチャーは出会っていたのではないだろうか。それが「ネオ・ポップ」というムーブメントを新たに捏造することによってではなく、日本画というジャンルの内部で、しかも具象性より抽象性を優先するかたちでなされていたことに、重大な意味があると思う。
2009/07/30(木)(福住廉)


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