artscapeレビュー
切符を持たない旅
2015年02月15日号
会期:2015/01/23~2015/02/01
ボーダレス・アートミュージアムNO-MA[滋賀県]
滋賀のアール・ブリュット・コレクションを美術家の木藤純子、演出家の桑折現が演出するという試み。昭和初期の町屋を改装したボーダレス・アートミュージアムNO-MAでは、これまでにさまざまにアール・ブリュット作品が展示されてきた場所であり、展示内容も馴染みの光景ではあったはず。私も何度か見ているが、展示の手法自体はオーソドックスなものとなっていたが、そこに、その場所のもつ特性や個性を二割増にして、体験自体の表面をほんのりと上塗りするのが、策士・木藤純子のテイストなのだ。旅へ誘う船や電車、バスといったモチーフの作品の配置や、アニメーション+サウンド(ともに今回のための制作)など。加えて窓に薄い布をはって光量を調整。柔らかい光を室内に回していたが、この日の天気は雪。降る雪の景色がまたささやかな彩りを加えていた。
奥にある蔵では、小さな照明を時間でON/OFF、鑑賞者の意図とは別に作品の可視時間を調節されていたが、一日の時間的な移ろいや、自然界での光の変化のよう。10分ぐらいでは暗がりに目が慣れず、絵自体をしっかりととらえることは出来なかったが。
作品自体の特徴に焦点が当てられることの多い、アール・ブリュット作品への過度な演出をしないことで浮き上がる、よりニュートラルな目線への試みだったと思う。
2015/01/31(土)(松永大地)