artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

開発好明「日の出・月の出 印象」

会期:2014/12/19~2015/01/17

ギャラリー・ハシモト[東京都]

最初の部屋の床には青地に白い星を描いたパネルを敷きつめ、壁3面には黒地に白い円が左下から出て右下に入るまでを描いた9枚のキャンバスを展示。真ん中のキャンバスはちょうど画面中央に正円が来て、日の丸のネガのようにも見える。奥の部屋も同様、床には赤と白のストライプ、壁には白地に赤い円を描いた9枚のキャンバスを並べている。こちらは間違いなく日の丸。最初の黒地に白丸を「月」を表わすイスラム旗、床のパターンを星条旗と見なせば、日本人も犠牲になった殺戮集団「イスラム国」問題が想起される。が、日本人の人質事件が表面化するのは個展終了後のこと。開発は予言者か。

2015/01/14(水)(村田真)

wassa モノローグ

会期:2015/01/08~2015/01/30

ondo[大阪府]

余分なものを描かずに、シンプルに骨太になっていく、wassaのここ数年の変化というか、プロセスが結実している。絵画の「しわ」のようなものが増えていくともいうような。立体作品の腰掛ける人物を購入。やけに「小さい」のも魅力。

2015/01/14(水)(松永大地)

守田衣利写真展「Close your eyes, make a wish.」

会期:2015/01/14~2015/01/27

銀座ニコンサロン[東京都]

守田衣利はフェリス女学院大学卒業後、アメリカ・ニューヨークのICP(International Center of Photography)で写真を学んだ。1998年に第7回キヤノン写真新世紀で優秀賞(ホンマタカシ選)を受賞し、2005年には写真集『ホームドラマ』(新風舎)を刊行している。現在はカリフォルニア州サンディエゴに在住しており、渡米して19年になるそうだが、今回銀座ニコンサロンで展示された「Close your eyes, make a wish.」には、その経験の蓄積がしっかりと形をとっているように感じた。
守田は2000年にアメリカ人と結婚し、2005年に娘が生まれる。その間に一家はハワイ・マウイ島、東京、熊本、上海、サンタモニカと移動し、守田自身は流産や死産を経験した。今回のシリーズはその間に家族、友人、親戚らにカメラを向けたもので、基本的には前作『ホームドラマ』の延長上にある。中判デジタルカメラの緻密な描写力と画像の情報量の多さを活かした40点の作品を眺めていると、何気なく過ぎ去っていく日々の営みに、小さな、だが取り返しのつかない無数の「ドラマ」が埋め込まれていることに気がつく。しかもそれらは、みるみるうちに色褪せ、消え失せてしまうので、写真で記録しておく以外には保ち続けるのがむずかしいものだ。守田の写真撮影の行為が、そんな記憶を大切にキープしておくために、あたかも毎日の祈りのように続けられていることがよく伝わってきた。
これらの写真をベースにしながら、守田はサンディエゴ周辺の中流家庭の子供たちを、夢と現実の間に宙づりになっているような感触で捉えた『In This Beautiful Bubble』シリーズの撮影も続けている。会場に置いてあったポートフォリオ・ブックを見ると、こちらもほぼ完成しつつあるようだ。写真家として、充実した仕事を次々に発表していく時期にさしかかっているということだろう。

2015/01/14(水)(飯沢耕太郎)

松尾勇祐 木彫展「箱庭ラプソディ」

会期:2015/01/13~2015/01/25

ギャラリーモーニング[京都府]

現在30代半ばの若手彫刻家ながら、祇園祭綾傘鉾の鶏像を担当し、昨年の「京展」では市長賞を獲得するなど、目覚ましい活躍を見せる松尾勇祐。これまで主に百貨店の美術画廊で活動してきた彼が、初めて街中の画廊で個展を開催した。作品はすべて木彫で、新作の小品12点と過去の動物彫刻が多数。新作はどれも半身像で、ほとんど素材そのままの下部から始まり、上部に行くほど緻密な表現になる。なかには動物とダブルイメージの作品もあったが、総じて表現力が高く、しかも安定感が感じられる。実力のある作家なので、今後も街中の画廊での個展を続けてほしい。

2015/01/13(火)(小吹隆文)

キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展

会期:2014/12/23~2015/03/01

Bunkamura ザ・ミュージアム[東京都]

博物学がもっとも盛んだった18世紀、キャプテン・クックの太平洋横断に同行した博物学者ジョゼフ・バンクスが、オーストラリアや太平洋の島々で採集した植物を克明に描いた銅版画を公開。精緻な線描に多色刷りのこの植物図譜は、新発見のものをひとつ残らず記録しなければ気が済まないという、写真発明以前の西洋人による強迫観念にも似た情熱の賜物といえる。しかしバンクスが私財を投じ、何年もかけて制作させた銅版画なのに、生前には出版にいたらず中断、再び動き出したのは1980年代のことだというから驚きだ。なんと200年後のデジタル時代にようやく日の目を見たのだ。どうりで美しいはず。でも植物って動物とは違って特徴がつかみにくいうえ、いまではみんな知ってる種ばかりだから(逆に絶滅種もあるかも)、どれ見ても似たり寄ったりで希少性も貴重さも感じられないのが玉にキズだったりして。

2015/01/12(月)(村田真)

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