artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
プレビュー:小谷元彦「Terminal Moment」
会期:2014/11/11~2014/12/14
京都芸術センター[京都府]
琳派400年記念祭事業の一環として京都芸術センターで開催される小谷元彦の個展。映像作品や巨大インスタレーションを駆使しながらも、立体の制作を通して彫刻の問題を問い続けてきた小谷。今展では、彫刻における「欠落」と人体の関係を軸として、そこに彫刻のイコンや運動の問題を重ね合わせた新作を発表する。関連企画として11月22日(土)には椹木野衣(美術批評家)とのトークイベントも開催される。
2014/10/31(金)(酒井千穂)
プレビュー:hiyomi circle 5th THANKS Exhibition
会期:2014/11/21~2014/11/30
kara-S[京都府]
hiyomi circleは主に京都で活動する、版画作家4人によるカレンダーをつくるユニット。カレンダーはアーティストグッズ、いや雑貨の基本中の基本アイテムではあるが、暦という枠組みを活動の軸にするということに、ワクワクしてしまう。それぞれの4人の絵も魅力的。本展では2015年の新作カレンダーの販売と、KUMAUHEI WORKS、Cellfib、とんぼせんせい、花背 WARAなど作家とのコラボグッズの展示販売が行なわれる。
2014/10/31(金)(松永大地)
プレビュー:大谷史乃 個展 「presence」
会期:2014/11/18~2014/11/23
KUNST ARZT[京都府]
京都市立芸術大学大学院修了、モノの認識についてのさまざまな作品をつくる大谷史乃。ウェブ上にあった旅行者による「金閣寺」スナップ写真を立体的につくった「5 scenes」なる作品は、ウェブ上で画像を見るだけでも興奮する。同じく過去に発表した、国宝の八橋蒔絵螺鈿硯箱の写真を短冊状に切って箱に編んだ作品というのもヤバそうだ。平静と狂気のようなものが見え隠れする感覚は、新作が楽しみ。
2014/10/31(金)(松永大地)
エレナ・トゥタッチコワ「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」
会期:2014/10/27~2014/11/08
Art Gallery M84[東京都]
エレナ・トゥタッチコワは1984年、モスクワに生まれ、現在は東京藝術大学大学院先端芸術表現科に在学中の新進写真家である。今年の夏、東川町国際写真フェスティバルの一環として開催された「赤レンガ公開ポートフォリオオーディション2014」でグランプリを受賞した。その受賞記念展として開催されたのが本展である。
被写体となっているのは、ダーチャと呼ばれるロシア人の伝統的な「夏の家」。夏の暑さと都会の喧噪を逃れて、郊外の家で過ごす習慣は、貴族たちの間で17~18世紀頃に始まったが、ソ連時代になると一般労働者も小さなダーチャを持つことができるようになった。森や川や湖などの自然環境に恵まれた場所で、ゆったりと時を過ごしながら、お喋りを楽しんだり、文学や音楽などにも親しんだりすることができるダーチャは、ロシア人の精神生活に大きな影響を与えてきた。ペレストロイカ以降の窮乏期には、ダーチャで育てた野菜や果物が生き延びる糧になったということもあったようだ。つまり、ダーチャほどロシア人の生に密着した場所は他にあまりないということだ。
エレナは、2007年頃から大学時代の先生のダーチャを中心に撮影しはじめた。それは、彼女自身のダーチャで過ごした子供時代の記憶、いままさに成長期にある女の子たちの日常、「永遠の夏」といいたくなるようなロシア特有の光と影のコントラスト、周囲の自然環境などが絡み合った、精妙な図柄のタペストリーとして形をとりつつある。「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」というタイトルは、「毎年、夏が終わろうとしている時、林檎が生まれる。子供たちが成長して大きくなる。そしてまた新しい人間が誕生する」という、自然と人間との深い結びつきを示している。まだこれから先、さらに成長して、よりスケールの大きな作品となっていく可能性を秘めたシリーズといえるだろう。
2014/10/31(金)(飯沢耕太郎)
美術する身体 ピカソ、マティス、ウォーホル
会期:2014/09/20~2014/11/30
名古屋ボストン美術館[愛知県]
戦後のアメリカといえば、抽象絵画の興隆が想起されるが、ここでは具象絵画をとりあげ、人を描いた作品や版画に焦点をあてる。幾つかの版画の制作プロセスもていねいに展示しており、勉強になった。名前を失念したが、モノタイプの手法でさっと女性を描いた白黒の作品がとくに印象に残った。
2014/10/29(水)(五十嵐太郎)