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美術に関するレビュー/プレビュー

鴎外と画家 原田直次郎──文学と美術の交響

会期:2013/09/13~2013/11/24

文京区立森鴎外記念館[東京都]

上野から千駄木まで歩き、昨年リニューアルオープンした鴎外記念館を初めて訪れる。安藤忠雄を思わせるモダンな建築だが、外壁はレンガを張ってから削った職人仕事だという。原田直次郎は鴎外が留学先のミュンヘンで知り合い、親友になった画家。ふたりの交流を示す書簡や鴎外の小説の挿絵などを中心とする展示で、絵画は素描や水彩を含めて6点のみ。代表作の《靴屋の親爺》や、鴎外が擁護した《騎龍観音》などは画像で紹介されている。絵画の現物が少ないのは文学者の記念館だから仕方がないけど、でも書簡とか本とか見せられてもなあ。

2013/11/08(金)(村田真)

所蔵作品展「秋」・「日本の山」

会期:2013/11/07~2013/11/28

日展新会館[東京都]

バスハウスのすぐ近くに見慣れぬ白い建物が建っている。「日展新会館」と書いてあり、展覧会をやってるので入ってみる。昔だったら意地でも入らなかっただろうなあ。1階が「秋」、2階が「日本の山」を描いた日本画と洋画が計20点ほど並ぶ。なんの刺激もない、毒にも薬にもならない絵ばかり。どうせなら「原発」とか「憲法」とか「秘密保護」とか、国民に関心のある時事ネタをテーマにしてほしい。

2013/11/08(金)(村田真)

何翔宇「信仰錯誤」

会期:2013/10/04~2013/11/09

SCAI ザ・バスハウス[東京都]

北京を拠点とする何翔宇(ヘ・シャンユ)の日本で初の個展。正面の壁には背丈ほどの高さのピンク色のドアが設置され、把手が電球になっている。アイ・ウェイウェイもそうだが、北京のアーティストはデュシャンの影響が強いようだ。ガラスケースのなかには1メートルほどのシリコン製のセルフ彫刻が横たわり、赤い布がかけられている。これはロン・ミュエクそっくり。壁掛けの五つのビデオモニターは画面が真っ暗なので故障中かと思ったら、宙を舞うホコリを撮った映像だった。これはつまらないけどおもしろい。いや、おもしろいくらいにつまらない。

2013/11/08(金)(村田真)

不可解のリテラシー

会期:2013/11/08~2013/11/15

東京都美術館ギャラリーA[東京都]

地下の巨大なギャラリーを数本の赤い糸が斜めに横断し、床に置かれたモニターには赤い糸が画面中央を水平に横切るように映し出されている。壁には赤い線を引いた透明なビニールシートが貼られていて、全体でひとつの作品と見なせるインスタレーションだ。フライヤーを見ると出品作家は4人で、ほかにアートディレクター、コーディネーターの名が入っているが、この6人のコラボレーションということだろう。フライヤーには「“不可解”は決して悪ではない」「“不可解”は楽しく美しいものだし、それに、本当は幸福なことだ」などと書いてあるが、それと作品との関係が不可解だ。

2013/11/08(金)(村田真)

森村泰昌「ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」

会期:2013/09/28~2013/12/25

資生堂ギャラリー[東京都]

森村泰昌の表現力は、今やピークに達しつつあるのではないだろうか。いかなるテーマでも作品世界のなかに取り込み、自ら登場人物になりきって、演じつつ再構築していく、その魔術的とさえ言える能力はさらに凄みを増しつつある。
今回のテーマは、言うまでもなくスペイン絵画の巨匠、ベラスケスの最大傑作「ラス・メニーナス」(1656)である。プラド美術館所蔵のこの名画を、森村は全8幕の「一人芝居」(活人画)として演じきった。森村はすでに1990年にベラスケスが描くマルガリータ王女に扮した作品を発表しているから、原美術館で展示された「レンブラントの部屋、再び」と同様に、旧作の再演と言えなくもない。だが、今回の展示は23年前とは比較にならないほど手が込んでおり、絵の中に描かれた11人の人物の一人ひとりを、意匠を凝らして演じ分け、森村本人らしき人物も登場させるというマニエリスティックな仕掛けは、ただごとではない高度なレベルに達している。以前のように絵画の中の世界に閉じこもるのではなく、現実とイリュージョン、見る主体と見られる客体、過去と未来とを軽々と行き来する千両役者のパフォーマンスが、目覚ましいパワーで観客を巻き込んでいくのだ。
そこで展開される「画家とモデルと鑑賞者の視線の蔓の縺れ」は捩じれに捩じれていくのだが、その最後に待ち受けているのは「そしてだれもいなくなった」と題するプラド美術館の展示室の虚ろな空間だ。見事な大団円。次の「一人芝居」の幕が開くのが待ち遠しくなってきた。

2013/11/07(木)(飯沢耕太郎)

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