2019年12月01日号
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artscapeレビュー

森村泰昌「ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」

2013年12月15日号

会期:2013/09/28~2013/12/25

資生堂ギャラリー[東京都]

森村泰昌の表現力は、今やピークに達しつつあるのではないだろうか。いかなるテーマでも作品世界のなかに取り込み、自ら登場人物になりきって、演じつつ再構築していく、その魔術的とさえ言える能力はさらに凄みを増しつつある。
今回のテーマは、言うまでもなくスペイン絵画の巨匠、ベラスケスの最大傑作「ラス・メニーナス」(1656)である。プラド美術館所蔵のこの名画を、森村は全8幕の「一人芝居」(活人画)として演じきった。森村はすでに1990年にベラスケスが描くマルガリータ王女に扮した作品を発表しているから、原美術館で展示された「レンブラントの部屋、再び」と同様に、旧作の再演と言えなくもない。だが、今回の展示は23年前とは比較にならないほど手が込んでおり、絵の中に描かれた11人の人物の一人ひとりを、意匠を凝らして演じ分け、森村本人らしき人物も登場させるというマニエリスティックな仕掛けは、ただごとではない高度なレベルに達している。以前のように絵画の中の世界に閉じこもるのではなく、現実とイリュージョン、見る主体と見られる客体、過去と未来とを軽々と行き来する千両役者のパフォーマンスが、目覚ましいパワーで観客を巻き込んでいくのだ。
そこで展開される「画家とモデルと鑑賞者の視線の蔓の縺れ」は捩じれに捩じれていくのだが、その最後に待ち受けているのは「そしてだれもいなくなった」と題するプラド美術館の展示室の虚ろな空間だ。見事な大団円。次の「一人芝居」の幕が開くのが待ち遠しくなってきた。

2013/11/07(木)(飯沢耕太郎)

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