artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

神々のたそがれ

再度、『神々のたそがれ』を見る。やはり、とんでもないクソ映画である。もちろん、映画がクソなのではなく、冒頭から糞の映画だ。透視図法的な統一がなく、画面の焦点を定めず、あらゆる細部が自律的にうごめく、過剰な映像は各パートの主従関係がない中世のポリフォニー音楽を想起させる。加えて、尖ったモノが画面を遮り、いつも上部から何かがぶら下がる。屋外であろうとも、上からの雨や下からの蒸気で空がはっきり見えず、異様に閉鎖的な画面だ。そして登場人物はカメラ目線を送り、ときに話しかける。その場にいるかのようなドキュメンタリーとしての中世SFだ。また宣伝で、嘴のようなものがついた嘆きの帽子をかぶせられた裸の女たちが処刑・拷問を待って並ぶ場面があるが、改めて見返してもない。確認すると、これと同一の映像はなく、やはり入場するところを後ろから撮った瞬間だけだという。黒衣の集団シーンといい、贅沢な映像のつくり方だ。

2015/03/21(土)(五十嵐太郎)

phono/graph 音・文字・グラフィック

会期:2015/03/21~2015/04/12

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

藤本由紀夫、softpad、ニコール・シュミット、八木良太、城一裕、intext、鈴木大義のメンバーから成るアート/デザインプロジェクト「phono/graph」。その目的は「音・文字・グラフィック」の関係性を研究し、それらを取り巻く現在の状況を検証しながら形にすることだ。神戸アートビレッジセンター(KAVC)のギャラリー、シアター、スタジオを使用した本展では、メンバーが持ち寄った書籍、音源、作品などを自由に手に取って体験できるライブラリー空間と、音、文字、グラフィックを触覚的に体験できる2つのインスタレーションを構築。まずライブラリーで「phono/graph」を学習し、次にインスタレーションで五感をフル活用してもらい、最終的に観客一人ひとりが新たな知見を得ることが目指された。また、上記メンバーがKAVCのシルクスクリーン工房を約半年間にわたり使用し、さまざまな物にシルクスクリーンを施す実験を行なったのも興味深いところだ。「phono/graph」は過去に、大阪、ドルトムント(ドイツ)、名古屋、京都、東京で開催されてきたが、今回が最も充実していたのではなかろうか。
ウェブサイト:http://www.phonograph.jp/

2015/03/20(金)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00030108.json s 10110480

イミテーション・ゲーム──エニグマと天才数学者の秘密

帰りの飛行機で見た映画「イミテーションゲーム」が面白い。少年時代、ナチス・ドイツの暗号エニグマの解読プロジェクト、戦後の自殺前の事件という3つの時間を行き来しながら、数学者アラン・チューリングの生涯を描く。現在われわれが使っているコンピュータの基礎につながる、でかいマシーンの造形がカッコいい。

2015/03/17(火)(五十嵐太郎)

宇宙からの巨大怪物の襲撃/長い眠りから覚めたら

会期:2015/03/01~2015/04/15

Brillia SHORTSHORTS THIEATER[神奈川県]

ブリリア・ショートショート・シアターの宇宙ショートフィルムプログラムを見る。フランスのGuillaume Rieu『宇宙からの巨大怪物の襲撃』とオーストラリアのLuke Doolan『長い眠りから覚めたら』が面白い。前者はミュージカルとパニックモンスターもののまさかのメタフィクション的融合でコミカル、後者は短編ながら大作の雰囲気がある。

2015/03/12(木)(五十嵐太郎)

第7回恵比寿映像祭『エリオ・オイチシーカ──マージナルな英雄』

会期:2015/02/27~2015/03/08

日仏会館ホール・ギャラリー[東京都]

上映プログラムでは、セザール・オイチシーカ・フィーリョの『エリオ・オイチシーカ──マージナルな英雄』を見る。トロピカリズモ運動に連なるアーティストのドキュメンタリーだが、いわゆる丁寧な説明というより映像モンタージュ的な作品だった。ブラジルにとって歴史的な現代美術家、オイチシーカによる着衣するアートのパランゴレや空間インスタレーションの動きの様子を見ることができたのが、収穫である。

2015/03/08(日)(五十嵐太郎)