artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
記録と想起・イメージの家を歩く
会期:2014/11/15~2015/01/12
3.11関係の映像を紹介するものだが、「イメージの家を歩く」の副題通り、25の小部屋が連鎖する展示デザインが印象的だった。リビング、寝室、台所など、すべて具体的なインテリアがある小さな空間に映像を置くのだが、なんとも不思議な気持ちになる。ただし、本棚の中身もフツーで良かったように思う。ゴダールやTAZなど、いかにも文化施設というセレクションではなく、どこの家にもありそうな平凡なモノの方が、この展示には向いている。作品は、酒井耕+濱口竜介が向きあう対話の撮影手法を再現した部屋、藤井光による沿岸風景、小森はるか+瀬尾夏美の波のした、土のうえ、川村智美の石巻記録、長崎由幹によるパイプの椅子インスタレーション、仙台で原発の問題を問う映像など、さまざまなタイプの作品を鑑賞できる。
2014/12/16(火)(五十嵐太郎)
紙の月
2014/11/15(土)公開
前作の「桐島部活やめるってよ」と同様、ありきたりな物語なのだが、登場人物の関係性や表情をていねいに、かつ映画的な瞬間を織り交ぜて描写することで、これだけ面白くできるのは、やはり吉田大八監督の手腕だろう。加えて、宮沢りえ、小林聡美、大島優子らの役者陣が、実在感ある素晴らしい演技だった。そしてラストで突発的に発動するカタルシスも、「桐島」を彷彿させる爽快感である。
2014/12/05(金)(五十嵐太郎)
インターステラー
『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督)は凄かった。超越と進化では『2001年宇宙の旅』、父娘の関係では『コンタクト』に続く傑作である。宇宙の描写や砂塵が吹き荒れる風景は、大画面で鑑賞しないと意味がないという意味において映画的な作品だ。社会背景の説明を削ぎ、ハードなSF映画としてのヴィジュアル表現も挑戦的だし、ドラマとしても申し分ない。なるほど、空間と時間の歪みや高次元の構造などは、クリストファー・ノーランが以前から手がけていたテーマである。ほかにも種の存続、ブラックホールの彼方など、見所が多い。
2014/11/23(日)(五十嵐太郎)
イコライザー
映画『イコライザー』(アントワン・フークワ監督)を見る。前半はついに娼婦役をするようになったクロエ・モレッツを、昼はホームセンター勤務、夜はダイナーで読書の日々を過ごすデンゼル・ワシントンが救う『タクシードライバー』的な雰囲気だ。しかし、後半は一転して、正義の世直し・必殺仕事人として暴れまくり、刺客を送り込むロシア・マフィアと全面対決する。主人公があまりに強過ぎて笑えるレベルだ。とくにホームセンターを舞台とした最終決戦では、主人公は銃器を使わず、まさにDIY的にあらゆるものを武器に使う。
2014/11/22(土)(五十嵐太郎)
プレビュー:フィオナ・タン まなざしの詩学
会期:2014/12/20~2015/03/22
国立国際美術館[大阪府]
中国系インドネシア人の父とオーストラリア人の母のもとに生まれ、オーストラリアで育ち、現在はオランダのアムステルダムを拠点に活動するフィオナ・タン。映像や映像インスタレーションを手掛ける彼女の作品は、初期においては自身の国際色豊かな「出自」を探究したものだったが、やがて人間のアイデンティティをつくり上げる「記憶」へと移り変わった。タンの初期から近年までの17作品が見られる本展では、彼女が追求してきたテーマの変遷をたどることができる。映像作品なので鑑賞に時間がかかりそうだが、貴重な機会なので見逃すわけにはいかない。
2014/11/20(木)(小吹隆文)