artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

機内で幾つか映画を見る。『エクスペンダブルズ3』(監督:パトリック・ヒューズ)は、仲間が痛めつけられるのが耐えられないと、シルベスター・スターロンが一度は解散を決めたものの、最後は全員集合で「戦争」規模の大暴れだ。『クローズ』がヤンキー喧嘩のユートピアだとすれば、こちらはまだまだ若手には負けないと、老優の友情を確かめあう天国である。そして破壊される舞台となった廃墟ビルがすごい。この場所を見つけたことで、充分に成功だ。

2014/12/25(木)(五十嵐太郎)

ベイマックス

『ベイマックス』(監督:ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ)を見る。今年の年末映画は良作が多い。米映画における日本の存在感が薄れるなか、さすがにロボット+戦隊+アニメの作品は、日本リスペクトの絵が多い。サンフランシスコと東京を融合させた都市のイメージは、必ずしも斬新ではないが、細部に至るまで、デザインへのこだわりを感じさせる。冒頭で少しだけ提示される大学(研究)か企業(金)かという対立は、クリエイターとディズニーの確執かと思ったが、物語はそう展開しなかった。今回も、犬と食をテーマにした冒頭の短編が良い。

2014/12/24(水)(五十嵐太郎)

フィオナ・タン──まなざしの詩学

会期:2014/12/20~2015/03/22

国立国際美術館[大阪府]

中国系インドネシア人の父とオーストラリア人の母のもと、インドネシアで生まれ、オーストラリアで育ち、その後ヨーロッパに移住して現在はオランダのアムステルダムを拠点に制作活動を行なうフィオナ・タン。本展は、彼女の初期から近年の映像作品14点を紹介する大規模展だ。彼女の作品は、初期作品では、坂道を転げ落ちる様子を捉えた《ロールI&II》(1997)や大量の風船で身体を浮かせる《リフト》(2000)など、運動や身体感覚にまつわるものと、《興味深い時代を生きますように》(1997)など、自らの複雑な出自をテーマにしたドキュメント調のものがあり、それが近年になると《ライズ・アンド・フォール》や《ディスオリエント》(ともに2009)など記憶をテーマにした作品へと移り、《プロヴナンス》(2008)、《インヴェントリー》(2012)では美術史への言及もテーマになっている。筆者自身は彼女の作品に不慣れなためか、テーマが見えやすい初期作品に共感を覚えた。ただ、彼女の作品は鑑賞に多大な時間を要するため、取材時は各作品を部分的に見るしかなかった。もう一度会場に赴き、たっぷりと時間を取って作品と向き合うつもりだ。そのとき、自分にとってのフィオナ・タン像が初めて明確になるだろう。そうした作品論とは別に、会場構成の巧みさも本展の見どころだ。映像作品では光漏れや音漏れをいかに回避するかが問題となる。本展では暗幕を使わず、展示室へのアプローチを長く取る、入口の壁を斜めにするなどして、洗練度の高い空間と作品の独立性を両立していた。この点は高く評価されるべきである。

2014/12/20(土)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00028835.json s 10106069

フューリー

映画『フューリー』(監督:デビット・エアー)を見る。反『永遠の0』映画として素晴らしい。涙のネタとして戦争を使う『永遠の0』のような、CG頑張りました、そしてお前ら泣けという過剰な物語をつけることがない。回想も後日談も何もない、戦場のみの描写に終始し、本物の戦車がかもしだす実在感と、ディテールの表現で押し切る超重量級の作品である。『永遠の0』が押し付けるような説教臭い道徳もない。ちなみに、『紙の月』の観客がOLばかりだったのに対し、『フューリー』はほとんど高齢の男性だった。

2014/12/19(金)(五十嵐太郎)

ゴーン・ガール

映画『ゴーン・ガール』(監督:デヴィッド・フィンチャー)を見る。事前に予告編で紹介していた展開は、全体からすると、ほんの序でしかない。女は怖い、という率直な感想だとネタバレ気味になってしまうが、それに終わらず、映画が終わった後も、結婚という日常にひそむ不気味な恐怖の感覚が持続する。フィンチャー監督らしく、その後はメディアを巻き込み、何度も物語がひっくり返り、思いがけない結末に向かって、ツイストを繰り返す。要は一種のファム・ファタルものなのだが、ベン・アフレックの馬鹿夫ぶり名演が、その効果に大きく貢献している。

2014/12/18(木)(五十嵐太郎)