artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
第7回恵比寿映像祭『極地征服』『ワールドフェア』『ストーリーテラー』
会期:2015/02/27~2015/03/08
ザ・ガーデンホール[東京都]
スクリーニング上映の「懐かしい未来」では、メリエスの『極地征服』(1912)と万博アニメのフライシャー『ワールドフェア』(1938)が面白い。わざわざ100年前の作品をいま見るだけあって、いずれもCGや特撮に見慣れたわれわれにとっても十分な強さがある。逆にいまある作品で一世紀後に見るのは一体何になるだろうか。ニコラ・プロヴォストの『ストーリーテラー』は、あいちトリエンナーレ2013とは違うタイプの作品で、ラスベガスの夜景を鏡面のように二重化するシンプルな加工を加えただけで、異世界の感覚を生み出す。自然がない、究極の人工的な景観だけでつくられた都市だからこそ可能な万華鏡のような効果である。
2015/03/08(日)(五十嵐太郎)
第7回恵比寿映像祭《最初にカケスがやってくる》
会期:2015/02/27~2015/03/08
ザ・ガーデンホール、日仏会館ホール・ギャラリー[東京都]
第7回恵比寿映像祭へ。日仏会館ホールでは、ホンマタカシのTRAILSシリーズの、映像インスタレーション《最初にカケスがやってくる》を見ていると、突発的にコンタクトゴンゾの激しい武闘的なパフォーマンスが重なり合う。クララ・イアンニは、ブラジリアの細部イメージと事件の映像作品である。オフサイト展示で、瀬田なつきによる黄金町や恵比寿の短編映像をめぐりながら、ザ・ガーデンホールへと移動する。3階はスズキユウリ、アルトハメル、ダンカン・キャンベル、山口典子、堀尾寛太、佐々木友輔、久野ギルらの展示である。そして4階は、中谷芙二子、かわなかのぶひろら、ビデオひろばのメンバーによる歴史的な作品を紹介していた。
写真:オフサイト展示
2015/03/08(日)(五十嵐太郎)
PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015
会期:2015/03/07~2015/05/10
京都市美術館、京都府京都文化博物館 別館、京都芸術センター、大垣書店烏丸三条店ショーウインドー、堀川団地、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺[京都府]
今年春の関西美術界で最注目の国際現代芸術祭。京都市美術館、京都文化博物館など、京都市内中心部の8カ所を舞台に国内外約40組のアーティストが展示を行なっている。芸術監督の河本信治は、あえて統一的なテーマを設定せず、現場から自律的に生成されるクリエイティビティを優先した。これは、昨今流行している地域アートやアートフェア、ほかの国際展に対するアンチテーゼの一種とみなすことができるだろう。それはイベント名が「para(別の、逆の、対抗的な)」+「sophia(叡智)」であることからも明らかだ。一方、統一テーマがないことでイベントの全体像が把握しにくいこともまた事実である。展示は全体の約8割方が主会場の京都市美術館に集中しており、そのうち約半数は映像もしくは映像を用いたインスタレーションである。ほかの会場は1~3名程度が出品しており、サイトスペシフィックな展示が行なわれた。筆者が注目したのは、鴨川デルタ(出町柳)でサウンドアート作品を披露したスーザン・フィリップス、堀川団地の一室で美しい映像インスタレーションを構築したピピロッティ・リスト、河原町塩小路周辺のフェンスに囲まれた空き地で、廃物を利用したブリコラージュの立体作品を発表したヘフナー/ザックス、京都市美術館でのワークショップと館の歴史を重層的に組み合わせた田中功起、一人の女性の生涯を複数の映像とオブジェ、迷路のような会場構成でエンタテインメント性豊かに表現した石橋義正、自身のDIY精神あふれる行動をドキュメント風に映像化したヨースト・コナイン、音楽のジャムセッションの様子を約6時間にわたり捉えたスタン・ダグラスといったところであろうか。ほかの国際展に比べて規模は大きくない「PARASOPHIA」だが、映像系が多いこともあって、鑑賞には時間がかかる。まず、会場で配布されているガイドブックを入手して、作品概要やコース取りなどを事前にチェックすることをおすすめする。
2015/03/06(金)(小吹隆文)
第2回 3.11映画祭 藤井光×五十嵐太郎トークショー「ASAHIZA 人間は、どこへ行く」
会期:2015/02/28
アーツ千代田 3331[東京都]
アーツ千代田3331にて、映画「ASAHIZA」の監督の藤井光とトークを行なう。実は3.11映画祭で上映する作品とは思えないほど、直接的な被災の話やシーンは少ない。が、現在、日本全国で起きている疲弊していく地域の話であり、映画という20世紀の共有知を使うことで、3.11に関する特殊な映画に限定されず、射程が広くなり、普遍性をもっている。それにしても、映画館のドアを閉じるところから始まり、画面にこちらを向く観客が映し出されることで、実空間とシンメトリーの構図を生み出し、われわれが映画を見ているのでなく、映画館がこちらを見ているような冒頭だ。
2015/02/28(土)(五十嵐太郎)
アメリカン・スナイパー
クリント・イーストウッド監督の映画『アメリカン・スナイパー』を見る。「国家」のために、そして戦場で仲間を救うために、異国において160人以上を撃ち殺した精密な殺人機械となる「英雄」的な兵士が、イラクから家族のいる母国の「日常」に戻るたび、人として壊れていく。単純な愛国とも、反戦とも言えない。戦争が人の精神に及ぼす影響を描いた作品である。実話をもとにした映画だが、最後にアメリカに帰国した主人公の身に降りかかる悲劇は、運命の皮肉と言うしかない。
2015/02/27(金)(五十嵐太郎)