artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

ポジティブショートフィルムプログラム 全5作品

会期:2015/01/16~2015/02/28

Brillia SHORTSHORTS THIEATER[神奈川県]

ブリリアショートショートのポジティブ・ショートフィルム・プログラムでは、Jasper Wessels監督の『傾いた男』が面白かった。身体がどんどん傾き、ほとんど横歩きになっていく。病気というよりも、彼だけ重力のかかり方がズレたと言うべきか。上下逆さの映画はあるが、斜めというのがユニークである。映像ならではの表現が効く物語だ。5番目の『人生に一度のひとめぼれ』は、これに類似したものがなくはない設定だが、奇跡の日を繰り返す、老人ホームならではのストーリーを13分弱でまとめている。

2015/02/26(木)(五十嵐太郎)

プレビュー:PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015

会期:2015/03/07~2015/05/10

京都市美術館、京都文化博物館、京都芸術センター、堀川団地(上長者町棟)、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店[京都府]

京都市美術館と京都文化博物館を主会場に、京都市内の7会場で開催される大規模なアートイベント。河本信治(元京都国立近代美術館学芸課長)が芸術監督を務め、蔡國強、サイモン・フジワラ、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、笠原恵実子、森村泰昌、ピピロッティ・リスト、田中功起、ヤン・ヴォー、やなぎみわなど約40組のアーティストが参加する。あえて統一テーマを設けず、現場で自律的に生成されるサムシングに重きを置いているのが特徴で、昨今流行りの地域型アートイベントとは明らかに一線を画している。また、会期中に市内の美術館、ギャラリー、アートセンター等で行なわれる展覧会や企画と幅広く連携しているのも特徴で、3月から5月初旬にかけての京都は、「PARASOPHIA」を中心としたアートのカオス的状況になるはずだ。

2015/02/20(金)(小吹隆文)

ダメ男ショートフィルムプログラム 全5作品/アカデミー賞ショートフィルムプログラム 全4作品

会期:2015/02/01~2015/03/15

Brillia SHORTSHORTS THIEATER[神奈川県]

ブリリア・ショートショートシアターの年間パスを購入したので、通うようになった。ダメ男ショートフィルムプログラムは、ちょっと悲惨すぎるような感じのものもあったが、3番目のStuart van Eysden監督の『テディ』(14分)は、コミカルなホラーで笑える。低予算、短い尺で、いかにその余白も感じさせる作品をつくることができるかが、短編映画の醍醐味である。アカデミー賞ショートフィルムプログラムは、さすがにクオリティが高い。短編は、巨額の予算を使うハリウッド一辺倒ではなく、作品がインターナショナルになりやすいのがよい。『ミスター・ヴォーマン』は、精神分析医と自らを神と名乗る受刑者の物語である。哲学的にも聞こえる会話が笑える。そして男はベルギーをこの世から消すと言い、本当にそれを起こしてしまう。一番よかったのが、Wei Hu監督の『チベットの埃』だった。北京やディズニーなどの書き割り写真を背景に、チベット遊牧民のさまざまな集合写真を撮るのだが、強烈な地域性と非場所の唐突なぶつかりあいが印象的である。そして撮影が終わり、最後に出現するフィクションのような本物の風景(=大自然の中の中国の建設現場)に驚かされる。ドキュメンタリーのような物語だ。

2015/02/16(月)(五十嵐太郎)

神々のたそがれ

アレクセイ・ゲルマン監督の遺作『神々のたそがれ』を見る。ある惑星が舞台というSF的な設定だが、まったく未来的ではなく、暮らしぶりやその背景となる建築は、まるで西欧の中世だ。しかも全編にわたって、ただならぬ悪臭が漂い、細部の描写に至るまで驚くべき実在感がある。絶えず、視界をさえぎる障害物があるという独特の映像だ。地球人は、この惑星の人々から神と崇められるのだが、ただただ、世界の退行を傍観するしかない。しかし、ここで起きている反知性主義の動向は、遠い世界の出来事だと思えない。

2015/02/12(木)(五十嵐太郎)

山城大督個展「HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ」

会期:2015/02/06~2015/02/22

ARTZONE[京都府]

京都市内の複数の会場で行なわれた「映像芸術祭 MOVING 2015」のプログラムの一つ。《VIDER DECK/イデア・デッキ》と《HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ》の2作品が出品されたが、特筆すべきは後者。本作は、会期前の会場に簡単なセットを組み、そこに1歳、5歳、7歳の子供たちを登場させ、複数台のカメラで撮影したものを撮影時とほぼ同じ状態の会場で再生するものだ。まだ社会を知らない子供たちが遊戯的な交流を続ける中で、種々の感情や関係性が生まれ、社会性の萌芽らしきものがうっすらと確認できる。子供たちの行動は本当に瑞々しく、またスリリングでもある。最初から最後まで目を離せない本作は、まさに傑作と呼ぶべきであろう。

2015/02/07(土)(小吹隆文)