artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013芸術監督就任記者会見

会期:2011/08/04

愛知芸術文化センター 12F アートスペースA[愛知県]

私事だが、第二回となるあいちトリエンナーレ2013の芸術監督に就任し、大村秀章県知事を表敬訪問した後、愛知芸術文化センターにて、記者会見を行なった。決まってすぐだったために、まだ固まったコンセプトではなく、超前衛と大衆性、空間と場所の力を引きだす、街なか展開の拡充、東日本大震災を意識したものなど、幾つかの抱負を語る。3年前の記者会見が厳しい場だったと聞き、なぜ建築の専門の人が選ばれたのか? などの質問を覚悟していたが、第一回のトリエンナーレの成功のおかげだろう。プレスは基本的に歓迎し、期待している雰囲気だった。ともあれ、これからしばらく名古屋への出入りが多くなる。今月は愛知県の新しいアートスポットを多く紹介しよう。

2011/08/04(木)(五十嵐太郎)

アトミックサイト

現代美術製作所[東京都]

会期:2011/07/18~2011/08/07、2011/08/11~2011/08/20
イルコモンズ監修による企画展。既存の「原子力発電PR施設」に対して「反/脱原子力発電PR施設」を仮設するという設定で、イルコモンズ自身をはじめ、石川雷太や伊東篤宏、Julia Leser & Clarissa Seidel、中村友紀、山川冬樹、吉田アミが作品を発表した。3.11からわずか半年しか経っていないにもかかわらず、3.11以前の日常を取り戻したかのような健忘症的多幸感のなかで、原爆の核と原発の核が同じ危険であることを意識の隅へ追いやり、依然として「人間の安全保障」を蔑ろにしてやまない私たち自身の愚かさを思えば、これに対抗する表現文化をはっきりと打ち出すことは絶対必要であるし、この20年のあいだにサブカルチャーが失ってしまったカウンターカルチャーとしての役割を蘇生させることも必要不可欠である。平たくいえば、イルコモンズによるクリティカルな表現活動の主旨には大いに賛同する。しかし、そうであるにもかかわらず、展覧会を見た後の違和感をどうしても拭い去ることができないのは、そこで発表されているのが、結局のところ、どこからどうみてもアート作品以外の何物でもないからだ。しかも、原発や放射能の危機をテーマとした中庸な作品ばかりであるところに、同じ危機を感じてやまない者としては、少なからず不満が残る。会場の冒頭には楳図かずおの『漂流教室』から引用した「あたしらはいま、ふつうの状態じゃないんだ! ふつうの状態じゃないときに、ふつうのやり方じゃまにあわないんだ!!」というマンガが象徴的なメッセージとして掲げられていたが、この展覧会そのものが「ふつうのやり方」に終始してしまっているといったら言い過ぎだろうか。楳図かずおを置き去りにするほどの「ふつうじゃない」表現が見てみたいし、それは必ずしも展覧会を構成するほどたくさんある必要はない。ひとつでもあれば、十分に生きてゆけるからだ。

2011/07/29(金)(福住廉)

モホイ=ナジ/イン・モーション

会期:2011/07/20~2011/09/04

京都国立近代美術館[京都府]

モホイ=ナジといえば、バウハウスの教師であり、写真やコラージュの作品が有名。その程度の認識しかなかった私にとって、本展は今までの認識を一新させてくれる目の覚めるような企画だった。彼はその流浪の生涯のなかで、写真はもとより、絵画、彫刻、グラフィック・デザイン、映画、舞台美術と、まさに八面六臂の大活躍。元祖マルチアーティストというだけでなく、コミュニケーションを重視するという点で現代アートの先駆者とも呼べる人物だったのだ。もしモホイ=ナジが現代に生きていたら、デジタル機器を用いてどんな表現を見せてくれただろうか。また、モダニストだった彼には、ポストモダン以降の世界がどう映ったのだろうか。作品を見ながらそんな夢想がどんどん広がっていった。

2011/07/19(火)(小吹隆文)

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堀内誠一 旅と絵本とデザインと

会期:2011/04/23~2011/06/26

うらわ美術館[埼玉県]

『anan』や『POPEYE』、『BRUTUS』のアートディレクションで知られる堀内誠一の本格的な回顧展。ADから絵本、ミニコミ誌、アエログラム(航空書簡)など、堀内の幅広い手仕事をていねいに振り返る構成で、非常に見応えがあった。図案家の父、治雄が師事していた多田北烏が主宰する「サン・スタジオ」に毎日新聞の美術記者、船戸洪吉が所属していたことや、堀内が14歳で入社した新宿伊勢丹百貨店で「原子力展」(読売新聞社主催、1954年8月12日〜8月22日)の広告やディスプレイを手がけたことなど、あまり知られていない事実を知ることができたのも大きい。雑誌誌面のカラーコピーを壁に貼りつけた展示はいかにも粗雑で貧相だったが、旅の絵手紙とともに現地で購入した玩具や土産品もあわせて展示するなど、遊び心を生かした展示手法も随所で見られた。なにより瞠目させられたのは、バラエティ豊かな絵本の数々。一冊一冊、内容にあわせて絵筆のタッチを変えており、堀内による華々しいクリエイションは確かな手わざによって支えられていたことがうかがえた。この描写の多様性は、たとえば河村要助の描写がおおむね単一性によって一貫していたことと比べると、よりいっそう際立って見えるにちがいない(「河村要助の真実」展、クリエイションギャラリーG8、2011年4月23日〜5月20日)。細かい情報とともに手描きで描き起こした絵地図や旅先から友人に宛てたアエログラム、滞在先のパリで自主的に発行していたミニコミ誌にも、その手わざの才覚が十分に発揮されていたから、やはりこのフリーハンドによる描写力こそ、堀内誠一の真髄なのだろう。

2011/06/26(日)(福住廉)

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JCDインターナショナル デザインアワード2016 公開審査

JCDデザインアワードの公開審査をオブザーバーとして見学する。歴代理事が審査員という豪華な顔ぶれだった。数カ月のディスプレイだと審査の対象にならず、1年以上存在していることが条件らしい。ファイナルの3作品は建築家によるもので、ゼロ年代以降の傾向が続いている。DSAの審査と同様、最後は社会・時代か、造形力かの択一の勝負となり、ここでも前者が選ばれた。中村拓志によるか細い柱で大きな屋根を支える構造のレストランは建築的にすごかったが、谷尻誠による本棚のある宿泊施設、《BOOK AND BED》が勝利した。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)