2019年07月01日号
次回7月16日更新予定

artscapeレビュー

堀内誠一 旅と絵本とデザインと

2011年08月01日号

会期:2011/04/23~2011/06/26

うらわ美術館[埼玉県]

『anan』や『POPEYE』、『BRUTUS』のアートディレクションで知られる堀内誠一の本格的な回顧展。ADから絵本、ミニコミ誌、アエログラム(航空書簡)など、堀内の幅広い手仕事をていねいに振り返る構成で、非常に見応えがあった。図案家の父、治雄が師事していた多田北烏が主宰する「サン・スタジオ」に毎日新聞の美術記者、船戸洪吉が所属していたことや、堀内が14歳で入社した新宿伊勢丹百貨店で「原子力展」(読売新聞社主催、1954年8月12日〜8月22日)の広告やディスプレイを手がけたことなど、あまり知られていない事実を知ることができたのも大きい。雑誌誌面のカラーコピーを壁に貼りつけた展示はいかにも粗雑で貧相だったが、旅の絵手紙とともに現地で購入した玩具や土産品もあわせて展示するなど、遊び心を生かした展示手法も随所で見られた。なにより瞠目させられたのは、バラエティ豊かな絵本の数々。一冊一冊、内容にあわせて絵筆のタッチを変えており、堀内による華々しいクリエイションは確かな手わざによって支えられていたことがうかがえた。この描写の多様性は、たとえば河村要助の描写がおおむね単一性によって一貫していたことと比べると、よりいっそう際立って見えるにちがいない(「河村要助の真実」展、クリエイションギャラリーG8、2011年4月23日〜5月20日)。細かい情報とともに手描きで描き起こした絵地図や旅先から友人に宛てたアエログラム、滞在先のパリで自主的に発行していたミニコミ誌にも、その手わざの才覚が十分に発揮されていたから、やはりこのフリーハンドによる描写力こそ、堀内誠一の真髄なのだろう。

2011/06/26(日)(福住廉)

artscapeレビュー /relation/e_00012853.json l 10007033

2011年08月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ