artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

新incubation2「Stelarc×contact Gonzo─BODY OVERDRIVE」展

会期:2010/10/30~2010/11/28

京都芸術センター[京都府]

身体にフックをつけて吊り下げられるパフォーマンスで知られ、近年は医学やロボット工学を取り込んだ作品を制作しているステラークと、ストリートファイトから導き出される過激なパフォーマンスで知られるcontact Gonzo。ベクトルは違えど、“肉体”という共通のキーワードを持ち、見る者に本能的な衝撃を与える両者を共演させるとは、何とも大胆な試みだ。しかし、彼らの真骨頂を体感できるのは、やはりライブ・パフォーマンスしかない。contact Gonzoは会期中に二度、ステラークはロンドンからのWEB中継を一度行なったとはいえ、ほとんどの期間は資料展的な見せ方にならざるをえないのが本展の限界だ。美術展の枠内でパフォーマンスを扱うことの難しさを、改めて実感した。ただし、北ギャラリーでcontact Gonzoが行なったサウンド・インスタレーションは別物。ライブの素材から新たな価値をつくり出すことに、見事に成功していた。

2010/11/16(火)(小吹隆文)

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ファッション写真展 女神(ミューズ)たちの肖像 モードと女性美の軌跡

会期:2010/10/21~2011/01/10

神戸ファッション美術館[兵庫県]

同館所蔵の、19世紀後半から1990年代までのファッション写真約130点を、各時代のオートクチュールやプレタポルテ(これも所蔵品)とともに展覧。他の美術館では真似のできない、写真と実物をシンクロさせる手法で、非常に説得力のある展示となった。また、会場入口では、ベルナール・フォコンの写真と、彼の作品に登場するマネキン人形数十体を対面配置して観客を歓待するという、心躍る演出がなされていた。写真は、まさにファッション写真史を代表する名作揃い。しかもそのすべてが発表当時のプリントだというのだから恐れ入る。嬉しさと同時に「これだけのコレクションを持ちながら、なぜ今まで有効活用しなかったのか」と、軽い憤りも感じたりして。今後は本展のような工夫を凝らした企画をどんどんやってほしい。

2010/10/21(木)(小吹隆文)

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プレビュー:Exhibition as media 2010『SHINCHIKA SHINKAICHI(シンチカ シンカイチ)』

会期:2010/11/15~2010/12/05

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

勝村富貴、久門剛史、藤木倫史郎、藤野洋右、吉川辰平からなるアートユニット、SHINCHIKAは、2002年に大阪・新世界の「新世界国際地下劇場」からインスピレーションを受け、結成された娯楽チームだ。記憶、都市、個人的な物語の断片をインターネットを駆使して編集し、映像、音楽、インスタレーションなど、幅広いジャンルの作品へと変換させる。本展では、彼らの今までの作品を展示するほか、会場の神戸アートビレッジセンターが立地する新開地エリアのエッセンスを取り入れた新作も発表。センター内各所に彼らの世界が展開される。

2010/10/20(水)(小吹隆文)

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水森亜土 展~どうしてずっとアドちゃんが好きなの?~

会期:2010/10/01~2010/12/26

弥生美術館[東京都]

イラストレーター・水森亜土の回顧展。イラストレーターのみならず、歌手、女優、画家、タレントなど多才な活動を繰り広げる亜土ちゃんの全貌に、イラストレーションの原画やテレビ出演の映像、幼少時に影響を受けた視覚資料、雑誌の連載記事など、さまざまなアプローチから迫った。じっさい、「絵は天職、歌は本職、女優は内職」と語っているように、亜土ちゃんのクリエイションは多岐に渡っており、その多方向性が、イラストレーションの歴史から彼女を外す事態を招いているのかもしれない。挿絵や図解など、文字を説明するという補助的な役割からイラストレーションという自立的なジャンルとして成熟させるうえでは、そうした排除の政治学もあるいは必要なのだろう。けれども、亜土ちゃんのイラストが大衆に広く愛されてきたことは厳然たる事実であり、その事実を無視した「歴史」にはたして何の意味があるのか、よくわからない。むしろ、彼女のイラストが亜土ちゃんというキャラクターと不可分であることを考えれば、水森亜土は岡本太郎や草間彌生、石田徹也、山口晃などと並ぶ、「アイドル・アーティスト」として歴史化するのがふさわしい。

2010/10/17(日)(福住廉)

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青木良太 展

会期:2010/09/24~2010/10/30

小山登美夫ギャラリー京都、TKGエディションズ京都、eN arts[京都府]

若手陶芸家の旗手として活躍中の青木だが、関西での個展は珍しい。それだけに、この機会を待ちわびていたファンも多かったのでは。展示は会場ごとに傾向が異なった。小山~では、器ではなくオブジェを展覧。逆にTKG~では、150点以上の器類が並び、コレクターの購買意欲を大いに刺激した。しかし、私が最も感心したのは、eN artsでのプレゼンテーション。八坂神社に隣接し、知恩院、高台寺、清水寺にもほど近い円山公園というシチュエーション、そして茶室を持つ画廊という特性を生かして、出品作品を茶席のセットで統一していたのだ。なかでも、画廊所蔵の銀食器と共にアレンジされ、“某国の王族が見よう見まねで茶会の設えをしたら”という設定のテーブルは、思わず微笑を誘う珍奇さで、見事であった。

2010/09/28(火)(小吹隆文)