artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
森美術館「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」
会期:2011/10/14
アカデミーヒルズ49[東京都]
森美術館の「メタボリズムの未来都市」展では、1970年の大阪万博で区切りをつけており、それを補完すべく、あまり触れられていない現代の建築家とメタボリズムの関係を考える企画を担当した。初日は、東京の都市を観察し、ヴォイド・メタボリズムを提唱する塚本由晴、生物のメタファーを設計の手法にとりこむ平田晃久、コンテナのユニットを活用する吉村靖孝らが出演した。討議では、菊竹伊東という直系を継承する前衛的な平田と、連続性を重視する塚本の考え方の違いが明確に浮かびあがった。
2011/10/14(金)(五十嵐太郎)
建築夜楽校2011「3.11以後の日本─国土・災害・情報」(分析編)
会期:2011/10/06
建築会館ホール[東京都]
中島直人は今こそ脱皮した都市計画が求められると語り、計画学の小野田泰明はぎりぎりで建築家の必要性を唱えたのに対し、磯崎新は南三陸町の津波で壊れた防災庁舎の写真を映しながら、以前から唱えていた近代的な「計画」概念の失効を指摘した。いまの時代は「プロジェクト」なのだという。こうした文脈を踏まえると、小野田は旧来の計画システムの内部に入り込みながら、プロジェクトを稼働させることを考えているのではないか。
2011/10/06(木)(五十嵐太郎)
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2011
会期:2011/09/17~2011/11/23
六甲ガーデンテラス、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、オルゴールミュージアム ホール・オブ・ホールズ六甲、六甲ケーブル、六甲ヒルトップギャラリー、六甲山ホテル、オテル・ド・摩耶(サテライト会場)[兵庫県]
阪神間の身近なレジャースポットであり、都市に隣接する貴重な自然空間でもある六甲山。その山上に点在するレジャー施設などを会場に、昨年に引き続きアートイベントが開催された。山上を散歩しながらアートを体験し、同時に六甲山の豊かな自然に気付いてもらうというコンセプトは秀逸で、今年も植物園内を移動している最中に、「やっぱり、ここはいい所だなー」とつぶやいてしまった。ただ、昨年に比べると作家・作品数が絞られており、六甲ガーデンテラスと六甲カンツリーハウスの展示がやや寂しかったのも事実。そこを観客がどう判断するかが、今回の評価の分かれ目となるだろう。
2011/09/16(金)(小吹隆文)
千代田芸術祭2011 展示部門「3331アンデパンダン」講評会
会期:2011/09/10~2011/09/11
3331 Arts Chiyoda[東京都]
千代田芸術祭2011の「3331アンデパンダン」展の講評を画家のO JUNさんとともに行なう。建築の場合は、敷地やプログラムからある程度、解答の基準を設定できるが、アートの作品は本当に幅広い。出展者とやりとりしながら、普段使わない頭脳を駆使して、なぜこの表現なのかを考えていく。五十嵐賞は、講評を担当した作品ではなかったが、岡崎京子の『ヘルタースケルター』の世界に入り込んだ山田はるかを選ぶ。ほかに最後まで悩んだ作家は、水戸部七絵、藤林悠、内田百合香、大庭彰恵、現代芸術最終兵器研究所だった。山田の作品は、最初に見たときは展示物を触ってはいけないと感じ、なぜ岡崎京子の漫画を置いてあるのか訝しく思い、二度目の訪問時にようやく開いた。そして執拗なまでに劇中の主人公になりきる作業に驚かされる。HPを参照すると、ジェンダーを軸にしたさまざまな制作をしており、さらなる展開の可能性を感じたことが、彼女を選んだ理由である。
2011/09/11(日)(五十嵐太郎)
9・11新宿原発やめろデモ!!!!!
会期:2011/09/11
新宿一帯[東京都]
3月11日からちょうど半年にあたる日に行なわれた脱原発デモ。新宿駅の周囲を反時計回りに周回するコースをおよそ1万人あまりが歩いた。前回の銀座・新橋に引き続き、警察による警備は過剰で大仰だったが、結果的にデモの参加者を12名も逮捕するという異常な事態を招いてしまった。私たちの目の前で、デモ参加者の手足を家畜のように持ち運んだ私服警官の姿は、それが「警備」という名を借りた「弾圧」であることを如実に物語っていた。デモの最後に新宿アルタ前で開かれる恒例の集会では、柄谷行人をはじめとする知識人や政治家、音楽家などが次々と発言したが、飛び抜けてすばらしかったのが、いとうせいこう×DUB MASTER X。原発の廃炉を訴えるポエトリー・リーディングによって、無粋な警察のせいで沈みかけた空気を鮮やかに盛り上げてみせた。「廃炉せよ! 廃炉せよ! 廃炉せよ!」と叫ぶいとうせいこうの言葉は、もちろん原発の廃炉を要求するメッセージだが、音楽的なリズムとともにその鋭い声が空間に何度も反響し、聴衆が熱を帯びて高揚してくると、次第に「ハイロセヨハイロセヨハイロセヨ!」とまるで念仏のように聞こえてきたから不思議だ。「ナムアミダブツナムアミダブツナムアミダブツ」と誰もが口にできるように、いとうせいこうは脱原発を願う者であれば誰もが念じることができる詩的な言葉を生み出そうとしたのではないだろうか。いまのところ、3.11以後の世界を生きるためのもっともすぐれた文化表現だと思う。
2011/09/11(日)(福住廉)